÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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ユリシーズⅣ
ユリシーズⅣ
ジェイムズ・ジョイス 集英社文庫

 何とか読み終わった最終巻。ついに故郷のイタケまで戻ってきました。全編通して、思った以上に楽しかったので満足。やっぱりスティーブンのところの叙述はよく分からないが。
 あらすじ
『エウマイオス』
喧嘩沙汰になったスティーブンをブルームは酒場まで連れて行き、もリーの写真を見せて妻を紹介する。午前一時。文体は、手垢の付いた言い回しで。
『イタケ』
スティーブンと共に家に帰ってきたブルームは、ココアを飲みながらスティーブンと他愛もない会話をする。二人は庭に出て用を足しながら、彗星を見る。スティーブンが帰った後、ブルーム派もリーの寝ているベッドに横たわり、眠りにつく。午前2時。文体は、質問と回答から成る「教義問答」風に。途中のスティーブンの歌(楽譜付き)が楽しい。ゆーだやじんのーいえだー。
『ペネロペイア』
モリーがベッドの中でいろいろなことを考える。午前二時半。文体はyesとノンストップな思考風。
yes山にさくぼくの花yesと言っておくれとそしてあたしはまず彼をだきしめyesそして彼を引きよせ彼があたしの乳ぶさにすっかりふれることができるように匂やかにyesそして彼の心ぞうはたか鳴っていてそしてyesとあたしは言ったyesいいことよyes。

 知識人であり形而上学的に世界を語るスティーブンと、(エセ?)科学的かつ世俗的なブルーム。若者であるスティーブンは就職先を辞め、塔から出て未知の世界へと旅立ち、一方ブルームは一日の終わりに自分の家に帰還する。けれど、そのブルームの元にいるモリーはブルームにとって慣れ親しみ、かつ未知の存在なのである。モリーとボイランの不義は、アイルランドの英雄パーネルや、アイルランド自身、小説「罪の甘い歓び」そしてペネロペイアに仮託して重層的に語られ、様々な些細なエピソードを取り込みながら、平凡人のありふれた一日は果てしない広がりを持った叙事詩と重なっていく(ように見える)。
 全体的な印象は、自己増殖プログラム付きの壮大な遊具(読者参加型)といった感じ。『オデユッセイア』の枠組みの中で、歌ったり、パロディしたり、謎々や下ネタを交えて、とにかく「小説の」言葉で遊び倒してしまった作品。全編にわたって縦横無尽に配された仕掛けは、分厚い注をしても全て解説されてはいない。そして、文学者たちの解釈は更なる解釈を呼び、わたしたち読者はふくらみ続けるテキストの中でいつまでも遊び続けていられる。漫然と読んでいると、すぐ置いてけぼりを食らって結構きついのだが、こっちもがんばるとその分楽しめたりして、スリリングな読書体験が楽しめる(気がする)
 例えば17章に
 いかなる天上のしるしが両者によって同時に観察されたか?
 天頂の琴座のヴェガから、髪の毛座の星群を超え十二宮のレオの彼方へと天空を横ぎって明らかに高速度で突進してゆく一個の星。
という文章がある。注にはこの獅子座のレオを「レオポルド・ブルーム」の『レオ』と解すると、様々な解釈ができると書いてある。普通なら、抽象的な文学的意味を添えるための言葉のように見えるけれど、素人読者たるわたしから読むと、別に御者座だろうが、乙女座であろうがこの場面の情景は変わらない気もする。(勿論その日の天球の範囲で)けれど、わざわざ『レオ』と書いてあるのは、それが「レオポルド・ブルーム」を連想させるからで、そうすれば読者が勝手に関連づけて考えるからで、それは小説を読むという行為と自然に意味を孕まざるを得ない言葉にとって必然であり、ここにわざわざ『レオ』がでてくるのは、それだけの理由でしかありえない(と思う)。その意味で、この『レオ』はまことに小説的な『レオ』なのだった。
 個人的には遊び心全開の、2巻『セイレン』と『キュクロプス』が楽しかった。『ナウシカア』のシュールな場面も好き。

 この丸谷訳以外に柳瀬訳も読んでみたいし、まだユリシーズでしばらく遊べそうです。
 というわけで、いざ漕ぎ出でむ、豊饒かつ広漠たる言葉の海へ。En-Joyce!
* 2006/12/05(火) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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