÷0  ジャンル雑多な読書感想文
2017.07 « .1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31» 2017.09
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
* --/--/--(--) # [ スポンサー広告 ]
差異の政治学
差異の政治学
上野千鶴子 岩波書店

 「ユリシーズ」で小説疲れしたので、社会科学系の本を読んでみた。小説と違って、言いたいことをずばっとさっぱり書いてくれるので、読んでいて楽に思える。
 作者はフェミニズム・ジェンダー論で有名な教授。名前くらいは聞いたことある人も多いんじゃないだろうか。基本書らしいので、幅広い分野について、作者の基礎的な考えが分かるが、その分論点の掘り下げが若干甘い気がした。中途半端で終わらせてしまうには、惜しいものが多いのでなおさら。けれど、目から鱗的な視点も多く、読んで面白かったのでそれでよし。
 以下、面白かった章だけまとめと雑感。
○差異の政治学
今ではすっかりメジャーになった感のある「ジェンダー」という言葉について解説している章。言葉にはそれ自体に歴史と文化が刷り込まれており、中立的な言葉を使ったつもりでも、それは真に中立的であるとは限らない。判然一体として曖昧な性のどこに境界を設け差異化するか、その動きが政治である。
○「労働」概念のジェンダー化
国の経済規模を表す国際基準である「国民経済生産」で、なぜ家事労働は無価値なものとして考えられるのか、という問題について。専業主婦は読むべし。確かに、お手伝いさんを雇うとその労働は収入として含まれるのに、主婦がやるとタダというのは不思議。夫婦間での経済力の偏在を「愛」という全ての価値を転倒させうる言葉で封じるのは、上手くできたシステムだと思ってみたり。結局、主婦の行う家事労働は経済活動の「前提」であって、それ自体は経済活動として考えられていないと言うことなのだろうけれど、これからはそんなことは言っていられなくなりそう。
○「家族」の世紀
「核家族」を家族の前提として考えてきた近代イデオロギーについて。近代的核家族(夫婦と未婚の子供)を標準とする歴史は意外と浅く、母系社会や大家族集団を「野蛮」として、核家族中心の「家族史」を研究することで、その形態を普遍化してきた。いったん成立した家族観はそれを「人倫の基礎」として相対化することを禁じる。
○男性学のススメ
女性にこうあるべきだと定めると言うことは、逆に男性もこうあるべきだと同時に定められることである。ということで、そういうのに疑問を持ったり疲れたりした男性からの「男性学」の発生について。
○複合差別論
被差別者は同時に、他のマイノリティに対して、さらには同じマイノリティ同士で差別者となることもあり得る。階級・性別・性的思考・障害者など絡み合うマイノリティのなかで、差別は複合的なものとなり、単純に「全ての差別からの解放」を掲げるような普遍主義は逆に危険である。
○<わたし>のメタ社会学
社会学を行う者についての心得。ニュースなんかでよく見る社会学者の言葉を吟味する上で、メディアリテラシーとしても大切な点もいくつか。

 通して読んでみると、この文脈での「フェミニズム」とは、もちろん女性の権利拡張思想を含むけれど、もっと広く、「近代思想」がmarginalize(上手い言葉が浮かばない)してきた者たち(マイノリティ)から、その抑圧を前提にしてきた近代を検証し、改善する試みであるように思えた。
 次は著者が以前に書いた、さらに過激でセンセーショナルだという噂の「スカートの中の劇場」を読む予定。やたらと気になる題名が巧い。
* 2006/11/14(火) # [ 読書感想文 ] トラックバック:1 コメント:0

■ コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: ←ここをチェックすると 管理者のみが読めるコメントになります
 


トラックバック
この記事のトラックバックURL

▼この記事へのトラックバック(あれば表示)
国家としての危機管理とはなんであろうか、という主題に十分答えられる内容になっている。著者の結論は、「情報」であって、この収集・管理こそが現代の国家レベルでの危機管理だというわけだ。米国のCIAしかり、英国のMI6、またはフランスのDGSE+DST(国防省対外治安総局+国
2007/10/04(木) 05:41:16) | 政治が最高によかった

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。