÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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ユリシーズⅡ
ユリシーズⅡ
ジェイムズ・ジョイス 集英社文庫

 相変わらずスティーブン中心の章は何を考えているのか不明だけれど、だんだん慣れてきて、楽しくなってきた2作目。
 あらすじ。図書館で文学仲間と『ハムレット論』を闘わせたスティーブン。一方ブルームは昼食を取った後、酒場で「市民」と口論した後、浜辺で少女を見ている。午後9時。 
 意味を引き寄せる言葉の習性が非常に巧く使われている印象。一つの言葉に二重、またはそれ以上の意味が込められ、些細などうでもよいはずの言葉が、文章としてあらわされることによって、全て読者へのサインと変わっていく。過去の文学作品や、文化的常識、日常での文脈を取り込むことによって、テクストの奥行きが増していく。読むものであり、聞くものでもある「言葉」の機能を視覚的・聴覚的に働きかけてフルに利用して、読んでいるだけでも楽しい小説に仕上がっている。
 たとえば、妻が寝取られようとしているブルームには、さらに妻であるペネロペイアが求婚者に迫られているユリシーズ・イギリスという巨大な王国にさらされているアイルランドのことがさりげなく込められている。そして、これだけの意味を持たせる(ように見せる)ことによって、平凡なはずの一日が非常に奥深くなっていく。
 というわけで、小説に使われる言葉によって、遊びに遊んでいる作品。『ユリシーズ』の謎解きにはまってしまう人が多いというのも、何となく分かる。

以下、面白かった章の覚え書き
『さまよう岩々』
 19もの人物の断片が組み合わさって構成されている章。それぞれがちらちらと関連しあいながら、最後の断章の総督の馬車がエピソードを貫いている。
『セイレン』
音楽が鳴り響く章またはショウ。
 「カエルの歌」のように、追いかけっこのようなフーガで展開される文体。始まる序曲(overture)。猥雑な雰囲気≪sonnez la cloche!≫の中で、ジングルと鳴る馬車の車輪、あるいはきしむベッドの音。男たちは歌を歌い、女たちははしゃぐ。底を流れるモリーの不倫への不安≪罪の甘い歓び≫。思い出したように主題の旋律(文章)が顔を出し、何食わぬ顔をして音楽的単語が紛れている。おまけに金管楽器ならぬ腸管楽器であるおならの音でこの章は締めくくられる。そして最後に
≪done≫
『キュクロプス』
≪俺≫の一人称といきなり割り込んでくるパロディ文体から構成される章。虚実入り混ざったでたらめ名詞がずらずらと並んでいたりして面白い。酒を飲むしがない市民たちが、『ホメロスのオデュッセイア』風に語られると、いきなり神にも似た英雄になってしまったりと、読んでいると忙しい。
一般的には、借金の取り立て屋と解釈されている語り手である『俺』を、柳瀬尚紀は実はだと唱えている。どちらが正しいかはよく分からないが、なんだか≪俺≫に愛着を感じてくる。
『ナウシカア』
少女小説チックな文体で始まり、恋愛妄想が繰り広げられる。その主人公であるガーティ・マクダウェルがやたらと美化されているのに、友達である少女たちが容赦なくこき下ろされていて恐ろしい。
あらすじは、ガーティが海辺の岩にもたれて座っているブルームを見て、彼を運命の人だと思いこみ、妄想を繰り広げたあげく、打ちあがる花火に紛れて彼に下着を見せる。ブルームはそれを見て自慰を行い(ガーティはそれを知っている)、女性たちについてつらつらと考える。そして最後に9時の鳩時計が≪クックー≫(寝取られ亭主の意も)と鳴る。情景を想像すると、かなりシュールで可笑しい。

 ジョイスになじめるかどうか分からない人は、清水義範の「私は作中の人物である」に収められている短編『船が州を上へ行く』を読んでみるのがお勧め。「ユリシーズ」よりジョイス節がさらに炸裂している「フィネガンズ・ウェイク」(柳瀬訳)を、日本人に分かりやすいように猿蟹物語をベースとして換骨奪胎した作品。これが面白ければ、きっとユリシーズも面白いと思えるはず(だと思う)

今回の抜粋
『ナウシカア』の章から(しかし、ユリシーズに抜粋はあまり適していない気もする)
 ミスタ・ブルームは足もとの深い砂地を棒切れで静かにかきまわした。彼女にメッセージを書け。消えずに残るかも。何を?
 I..
 朝になれば誰かのべた足がぺたりと踏みつける。むだだよ。波に洗われて消える。潮はここまで来る。彼女の足もとに水溜まりがあったからな。(中略)
 AM. A.
 書ききれない。よそう。
 ミスタブルームは靴でゆっくりと文字を消した。砂ってどうしようもない。何も生えないし。みんな消えるし。大きな船はここまではこない。
* 2006/11/09(木) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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