÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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Intorelance あるいは暮林助教授の逆説
漫画ですが
「Intorelance あるいは暮林助教授の逆説 」
川原泉 白泉社文庫

 ほのぼのした作風で、どことなく哲学風味が感じられないこともなく、恋愛色が薄いのが持ち味の川原泉作品。最近『笑う大天使』が映画化したので、ちょっと話題。が、この作品はそんな彼女には珍しくシリアスな感じのサスペンス短編。文庫版「中国の壷」あるいはコミック版「ゲートボール殺人事件」に所収。おそらく古本屋を探した方が早い。
 あらすじ。女子大生、鷹見陸にうり二つの大学生が、去年失踪した。それはともかく、暮林助教授に不当に単位を認定されなかった鷹見は彼に講義しに行くが、「気にくわない奴に似ている」という理由で一蹴されてしまう。彼は既婚者で業績も上げているが、妻には逃げられている。諸事情から鷹見は、担当教授であり暮林の親友である各務と共に、アルバイトとして暮林助教授の別荘に向かうことになる。そこにある桃の木は、なぜか一つだけとても甘い実がなるのだったが。
 記憶の差し替えとか、忘却とか、思考実験とか、かなり好みである設定満載のサスペンス短編でした。知的スノビスムを刺激される感じで。たまに差し挟まれるギャグも、適度に気が抜ける。
 他の短編も一風変わった感じのものが多く、だからといって説教臭くもなく、普通の少女漫画はなんだか合わないなあと思う方は、是非。


以下ネタバレ


以下ネタバレ

 傍観者であるはずの鷹見と各務が何も知らずに被害者を肥やしにした桃を食べてしまう、というグロテスクさがとても良い。彼らは無意識に悪事の共犯者となってしまい、そしてその実はとても甘い。だから最後に彼らはただ暮林を思って涙を流すだけで、告発をしない。
 暮林も彼は彼で、柳沢そっくりの鷹見を近くに置くことで記憶を上書きしようとしたり、殺人という不快な事実を忘れるために、柳沢と妻を赤い鳥と白い鳥に置き換えてしまったり。彼女は赤い鳥を撃ち、僕は白い鳥を撃った。
 99%の忘却が彼を支え、けれど残った1%の正気または狂気がある限り、永遠に逆説(パラドクス)は続いていく。
 最後の長く哲学めいた独白こそが、存在による逆説へのintolerance(耐え難きこと)の現れなのかもしれない。

亀になってしまう「森には真理が落ちている」が未だ読めていない。どのコミックス収録だったろう?
* 2006/07/31(月) # [ 企画 ] トラックバック:1 コメント:0

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非常に骨子が似ている。びっくりした。あとで詳しく書く。 ふたつとも数学者の話であり、夫婦関係の話であり、オブセッションの話でもある。「ゼロで割る」はテッド・チャンの作品で、短編集である「あなたの人生の物語」に収録されている。「Intolerance」は川
2009/07/28(火) 05:30:29) | HPO:機密日誌

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