÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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キャッチ=22
キャッチ=22
ジョーゼフ・ヘラー ハヤカワ文庫

 不条理文学第2弾。狂った構成と狂った登場人物達でかたられる戦争小説。
 あらすじ。第二次大戦末期、アメリカ軍所属のヨッサリアンは責任出撃回数を終えようとしていた。しかし、その度に責任出撃回数は増え、彼は本国に帰還することが出来ない。仮病や精神異常を装うことで、出撃を避けようとするが、「精神に異常を来した者は申し出れば、本国に送還される」「申し出る者はそれだけの分別があるので、出撃しなければいけない」といった不文律の規則キャッチ=22のせいで、ヨッサリアンは出撃し続けなければいけない。
 ちなみに、キャッチとはひっかかってしまう「落とし穴」のような意。
 多彩に狂っている登場人物達がおかしい。誰かに襲われるという強迫観念に囚われたヨッサリアンを始め、自分は肺炎で死ぬと確信している(戦場なのに)ホワイト・ハルフォート酋長、食堂係将校にしてシンジケートの親玉にして資本家の黒幕マイローや、団体行進に命をかけるシャイスコプフ中尉。一番不気味なのは白痴的なアーフィーで、一押しは気まぐれな父親が付けた名前のせいでついには消滅してしまうメイジャー・メイジャー少佐(メイジャー)。
 構成もぐしゃぐしゃにかき回された細かな断片で出来ているような作り。思いだしたところからエピソードが語られ、中途半端なままで次のエピソードに飛び、よく見てみると前に出てきた話に触れていたり、注意深く読んでいかないと、すぐ混乱してしまう。時空間の感覚が狂った世界は、戦争の中で混乱している精神状態そのままを表しているらしい。
 と言うわけで、読んでいると楽しい。狂った登場人物達の、奇妙な会話も大変好みでした。合理的なようで自家撞着に陥って、どうにもならなくなっている様が現代資本主義の矛盾を風刺しているとのこと。脱出しようとした時に、救命胴衣の代わりに自国企業の宣伝ビラが入っているシーンは笑ってしまうほど泣ける。正にこの世はスラップスティック的。
 戦争と個人という、両立し得ない二つのものに挟まれて、忘れてはいけないはずのものを見失って、気違い呼ばわりされても、それでも最後に人間の秘密を思いだして、飛び立つラストシーンは爽快。
 たとえそれだけでは、根本的解決に至らないとしても。


(以下ネタバレ)
まさかあの、ヨッサリアンのためにストーブを300回も壊しては直し、林檎のほっぺを手に入れるために林檎をほおばっていた、出撃するたびに不時着するオアが、スウェーデンに行くなんて。ここ数年で、本を読んでいて一番驚いた。オア、すごいよオア。

 おかしいことだと気付きながら何もしないうちに遂に書類上戦死してしまったダニーカ軍医や、むごたらしく戦死や『消滅』した友人達、勇気の足りなかったダンビー少佐、耐え抜くことを選んだ従軍牧師を置いて、犠牲者の象徴であるネイトリーの女の襲撃を振りきって、脱走しようとするヨッサリアンに未来はあるのだろうか。ネイトリーの女の幼い妹は無事に処女のまま見つかるのか。
 キャッチ=22は、不文律ゆえに、告発することも、正体を暴くことも、破壊することも出来ない。それは、戦争だから仕方がないという、おかしな事だと分かっていながら従わざるを得ない諦めの雰囲気に似ている気がする。ヨッサリアンが断固それに反対し続けたのは、あまりにも無惨なスノードンの死、そして自分に迫る死を本当に怖れていたからだろうか。
「おまえは戦争に勝つことを話しているが、おれは戦争に勝ってなお生き残ることについて話しているんだ」
「仰せのとおり。おまえはそのどちらが大切だと思う」
「だれにとって。目を開けてよく見ろよ。クレヴィンジャー。死んだ者にとっては、だれが戦争に勝ったってちっとも変わりはないんだぞ」(中略)
「こいつぁめでたい!敵にこれほど安心感を与える態度-そう確実に言える態度-は、俺には思いつかないからな」
「敵というのはな、どっちの側にいようと、とにかくお前を死ぬような羽目に陥れる人間すべてを言うんで、それにはキャスカート大佐も含まれているんだ。そのことをおまえ忘れるなよ。長く憶えていればいるほど、それだけおまえは長く生きられるんだから」
 だが、クレヴィンジャーはそれを忘れ、死んでしまったのである。
* 2006/06/17(土) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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