÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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鍵・瘋癲老人日記
鍵・瘋癲老人日記
谷崎潤一郎 新潮文庫

 どちらも不能になりかけた男が、妄想によって欲情を掻き立てる話を日記の文章でつづったもの。両方とも変態くさい。前者はサスペンスチックで、後者はほのぼの日記(嘘)。
「鍵」あらすじ。性的能力が衰えた主人公は、古風で貞淑な風を装いながら淫蕩な妻の欲求に応えるため、性生活を詳細に記した日記の鍵をわざと妻の見える場所に置き忘れる。日記を読んだ妻は、読んでいないふりをしながら、夫に見せる目的で自分も日記を付け始める。妻の裸体を鑑賞するなどの行為に飽き足らなくなった夫は、後輩の木村を妻に接近させることで、自分の嫉妬を高ぶらせ、能力を回復しようとする。双方で日記の盗み見をおこないながら、それを意識して、書き続ける夫婦の結末は。
 陰険4人組の騙しあいが楽しい。大学教授の主人公、その妻郁子、娘の敏子、後輩の木村が主な登場人物なのだが、日記でつづられている本作品では、結局皆がどのような意図で行動しているのか、はっきりとは分からない。日記での文章だから、思ったままを書いているとは限らないところに、叙述ミステリのような要素も含まれる。
 郁子の淫蕩で魅力的な体を中心として、物語は進んでいて、端的に言えばそれ以外のものはほとんど出てこない。主人公は不能になりかけており、また死を予感していることで、性への欲求は一段と鬼気迫った者になっている。これは、「瘋癲老人日記」にも繋がるもの。考えてみれば、性欲は自己保存欲求の一形態であるのだから、死の間際になって切実さを増すことも当然のことなのかもしれない。

「瘋癲老人日記」あらすじ。数年前に脳梗塞を起こした主人公の老人は、左手が多少不自由だが、性的能力は失っても息子の嫁の颯子を妄想の糧にしながら、おおむね健康に毎日を過ごしている。颯子は不倫しているようだが、主人公はそれを見逃すことでおこぼれに預かっている。そんなある日、主人公は墓を作るために、颯子と京都に赴く。
 ひたすらに妄想日記。悪ぶっている颯子や、腐れ縁状態のばあさんが、入院の時など時折見せる気遣いが、他の部分とのギャップと相まって何とも言えない感じ。食欲と性欲で生きているようなものだから、食べ物の描写は生き生きとしていて美味しそう。鱧に梅肉を付けて食べるシーンとか。「鍵」と違って悲壮さよりも、おおらかな雰囲気さえして、読んでいて微笑ましいような困惑するような気分になる。とりあえず、介護している老人がこんな風にわがままだったら、少々手に余る気はする。
 両作とも主人公が足フェチなのは、作者の性癖だからだろうか。「瘋癲老人日記」の主人公の、墓まで足の形にして、死後まで踏まれ続けようという執念には脱帽。

 次は変態老人つながりで川端康成の「眠れる美女」を読む予定。あとは、筒井康隆の老人版バトルロワイヤルの「銀齢の果て」か。


以下、「鍵」のネタバレコラム

最大の被害者であり、影の黒幕である主人公の娘の敏子。彼女は一体、何がしたかったのだろうか。とりあえず、以下に行動を挙げてみる。
・主人公の家から、下宿へと移る(木村の家に近い)
・母に「お父さんに殺されるわよ」と忠告する
・父の採った母の隠し撮り写真を、木村の家の本の間から見つける
・下宿で母に酒を飲ませ、木村に風呂で介抱させる
・木村と母の逢い引き場所を紹介する
・父の入院中に、母と木村の逢い引きを手引きする(アプレの友達に聞いたらしい)
・父に母親の隠していた日記を探し、父に読んで聞かせる
・父の死後には、木村と結婚する予定(偽装結婚?)
以上、父や母のどちらか一方に肩入れしているのでもなく、かといって木村に尽くしているのかとも判断しがたい。
その他参考資料
・性格は陰険で、母親ほど外見は良くない
・木村に好意を抱いている(?)

直接性行為に絡んでこないので、この作品では間接的にしか描写されず、非常に性格の読みとりにくい登場人物であるが、行為の意図の仮説を立ててみる。
①母のために尽くした
 一番ストレートに行動だけ見ると、これが有力。ただし、陰険さが足りない気がするので保留。そもそも母娘関係はあまりよろしくないので、可能性は低い。
②母のために尽くしたと見せかけて、父に味方した
 この作品の媒体である日記を重要視した説がこれ。母にコンプレックスを抱いているらしいので、ある程度理由は付くが、父にも嫌悪感を抱いていることを考えると疑問が残る。
③母のために尽くしたと見せかけて、父に味方したと見せかけて、木村のために行動した
 この場合木村は親子丼(下品ですみません)になるんでしょうか。われらが敏子が木村ごときにただ尽くしているのでは面白くないので、この説は保留。
④特に意図はなく、衝動の赴くまま行動した
 作者の都合によるもの。それを言ってはお終いなので、これも保留。
⑤実は父と同じ性癖の持ち主なので、母と木村を付き合わせることで、満足を得ようとした
 というわけで、一押しの仮説。母親に似て陰険で、父親に似て倒錯的なところを考え合わせると、これが一番妥当というか、自分としては納得のいく仮説。やっぱり、敏子は被害者であるより、影の黒幕であるほうが読んでいて面白い。
* 2006/02/12(日) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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