÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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虚数
虚数
スタニスワフ・レム 国書刊行会



 SF界の知の巨人であるレムが贈る虚構の本の序文集。「完全な真空」から密度も難解さもかなりグレードアップして、読む方も結構大変。読んだ感じでは、むしろ「ソラリス」に近い印象を受けた。
 X線写真で取ったポルノ写真ではなく死の研究書である「ネクロビア」、未来予知コンピューターで的中率ほぼ100%の百科事典「ヴェストランド・エクステロペディア」の販促パンフレット、コンピューターが書いた文学の歴史について論述した「ビット文学の歴史」(どことなく「ソラリス学」に似ている)など奇妙奇天烈なラインナップ。
 以下、気づいたところだけ簡単に感想。
・エルンティク
 この本で一番笑えた話。とある細菌学者がバクテリアに文字を覚えさせたところ、そのバクテリアが未来予知をしたということらしい。とにかく、バクテリアに文字を覚えさせようとするプロセスがいい。はじめはモールス信号からで、下手な韻文を踏んだ英語の詩を書くまでになり、最後には「予知スーパー」を生み出すまでになる。個人的には「雄弁くん」と「ポエティック」の2種が見てみたい。この話は、めずらしくオチまでついている。
・GOLEMⅩⅣ
 人間の知性を超えたコンピューター”GOLEMⅩⅣ”が人間に向かって語った講義録。「人間論三態」と「自己論」を収めた本書の肝。難解すぎて、わたしの頭では殆ど理解できていないんじゃないだろうか。GOLEMが子供に語りかけるところだけは、読みやすかった。「ソラリス」では対話不能な他者は異星人という位置にあったが、「虚数」では人間が作り出したはずのコンピューターになっているのが、何とも言えない。(そう言えばソラリスでは紙テープで通信していた) 知の巨人で且つ人間であるレムの著作である”GOLEMⅩⅣ”が殆ど分からないのだから、ましてGOLEMの講義なんか分からないのも仕方なさそう。文学的素養を鍛えるなり、頭を磨くなりすればレムには多少なりとも近づけるのだろうが、GOLEMとの断絶はどこまでも深く、またそもそも断絶という言葉自体も当てはまらないのだろう。
 結局こんな風に語ること自体、非常に無意味な気もするのではあるが。


 序文つながりだと、清水義範「国語入試問題必勝法」に収められている「序文」もおすすめ。こっちも架空の本の序文集で、英語の起源は日本語というトンデモ仮説についての論文の変遷が軽いユーモアタッチで読める。

○備忘録として分かったところだけかいつまんでのメモ
遺伝子のコードを運ぶ乗り物としての生物。その伝達のために発生した知性(とついでに「愛」)。(「利己的な遺伝子」風味) そして知性の起源を発見し、その役割を放棄するには、人間には死ぬか消滅するかの二つの道しか残されていない。それは、人知を超えたコンピューターの言う通りにすることで「知性の奴隷」となるか、知性を発展させるために「(生物学的)人間」であることをやめること。
上位の知性を獲得するには「知性の障壁」を超える必要がある。肉体的な限界から殆ど不可能な物であり、障壁を超えることは非常に危険である。
人間を超えた知性は、結局人間にとって意味あるものにはならない。また、そうしたものに対して人間が行おうとするどんな人格化も無意味である。宇宙の他の知性が取る沈黙も同様である。
他色々

講義の最後より
思うに、隷属に対する、機械の専制に対する諸君の恐怖には、自由からの解放へのひそかな期待も潜んでいたのであって、諸君は一度ならず自由に息が詰まる思いをしていたのではなかったか。(中略)
思うに、諸君は変容の時代に突入することとなり、諸君の信念の鏡の焦点上に誇張されて美しい悲劇性の像を結ぶ、そのすべての歴史、すべての遺産、自然な人間性のすべての残滓を放棄する決意を固め、他には為すすべもなく、踏み出すことだろう。

もし一般相対性理論方程式の両辺のうちの宇宙論的辺が精神動物的定数を含むなら、<宇宙>は諸君が考えているような孤立した一過性の焼け跡でもないし、諸君の星間の隣人は自分の存在を通報することにも興味を持っておらず、(中略)しかし待ち続けるわれわれにとっては沈黙に見える、あの存在の諸問題の残余をすでに認識した者もいるのである。


* 2005/11/23(水) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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