÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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吾輩は猫である
吾輩は猫である
夏目漱石 岩波文庫


 言わずと知れた漱石の代表作の一つ。数年前にトチメンボーの辺りで挫折していたまま放置していたので、久しぶりに再挑戦してみたところ、するすると嵌ってしまった。
 あらすじ。名無しの猫君である「吾輩」が、主人の苦沙弥先生の身の回りで起こる出来事を語っていく。身の回りの人々の失敗談やら、泥棒騒ぎやら、裏の学生連中との諍いやら、取るに足らないような些事を苦沙弥先生や友人達とのやりとりが、猫の視点から事細かに描かれる。
 とにかく、過剰な饒舌体を楽しむべし。軽妙洒脱な語りの魅力が溢れている。明治特有の漢字だらけの青年文士のような文体もますます、この殆ど贅言と言ってよいような内容に拍車を掛ける。洒落と機知に富んでいて、かついい加減な迷亭の長広舌が、この小説の特色の一つだろう。明治の風俗(特にインテリ達の)も垣間見られる。
 夏目漱石が色んな形でちょこちょこと顔を出すのが、読んでいて興味深い。漱石自身がカリカチュアされた苦沙弥先生はもちろん、こっそり東風君の同人仲間として小説を書いている「夏目送籍」なんかが出てきたりする。そもそも語り手である「猫」自身が、話が進むにつれ、だんだん飼い主である苦沙弥先生に似てくるのが可笑しい。(どことなくものぐさな仕種とか、他の猫とのつきあいを殆ど立ってしまったかのように見えるところとか) 見る「猫」と見られる「苦沙弥先生」という漱石自身の(?)微妙な緊張関係が、動物による人間の観察という形式によって際立ってくる。
 文明開化も真っ只中、日露戦争の勝利に西洋文明万歳という雰囲気の中で書かれたと思われる終盤の悲観的な文明論は、洋行したこともある漱石にとって、どのような意味を持ったのだろうか。(迷亭の結婚に関する予言は、今の時代にかなり当てはまっていて驚く。)
 それにしても、大産業が勃興しはじめ資本主義社会が浸透していく社会で、資本家達が力を握って行くにせよ、漱石のブルジョワ嫌いは筋金入り。よっぽど何かあったのか。金田鼻子についての描写は、可哀想を通り越して、吹き出してしまう。
 論文や解説書などには、このあたりのことは詳しく載っているのだろうが。

 楽しい人物紹介
・珍野苦沙弥 語り手である猫の主人。気難しい英語の先生。(漱石自身を戯画化した姿らしい)
・水島寒月 苦沙味先生の元門下生。球磨り名人で、蛙の目玉の電離性を研究する理学士。
・迷亭 法螺吹き美学者。酩酊の名の通り、酔ったような与太話ばかりする。*
・越智東風 寒月の友人で、詩人。真面目な芸術信奉者。「おちこち」ではなく「とうふう」と呼ぶと怒る。
・鈴木の藤さん 有望な実業家。近所のブルジョワである金田の手先のような働きをする。*
・多々良三平 九州出身の苦沙味先生の元門下生。駆け出し実業家。山の芋を送ってくれる。
・八木独仙 山羊のような髭を持った消極的哲学者。知人を何人も狂わせた実績を持つ。*
・金田鼻子 貴き鼻の持ち主。娘の富子を寒月と結婚させようとする。
(*は苦沙弥の元同窓生)

追記)「吾輩は猫である 読書感想文 あらすじ」などのキーワードでいらっしゃった方へ
全く役に立たないページで申し訳ありません。
基本的に明治インテリがだらだらしゃべったり、どうということもない騒動を繰り広げているだけなので、個人的には長い割に、読書感想文向きの教訓を引き出すのには、あまり向いていない作品だと思います。
課題図書でないのなら、ベタですが夏目漱石なら「こころ」の方が書きやすいと思います。
「猫~」はとりあえず楽しい小説を読みたい方に、是非一読をおすすめいたします。

○奥泉光「吾輩は猫である殺人事件」関係の小ネタ
 伯爵の推理シーンで花瓶の強度をアルファベットを使って説明する箇所は、寒月君の語る「首縊りの力学」を語るシーンから。
 作中で名前の出てくる「夏目送籍」は、東風の同人仲間。
 「電光影裏で春風を斬る」は独仙の禅宗めいた口癖の一つ。
他にも色々とあると思うが、とりあえず目に付いたところだけ。
 
* 2005/10/23(日) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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