÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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殴り合う貴族たち
殴り合う貴族たち
繁田信一 角川書店

 摂関政治期の平安貴族たちの暴力沙汰について、賢人右府と呼ばれ藤原道長らにも一目置かれた右大臣である藤原実資の書いた日記『小右記』をもとに紹介していく。優美でたおやかなイメージの強い平安貴族たちが、内裏の中や、都の路上、天皇の御前、至る所で発生する殴り合い、罵りあい、一方的なリンチに略奪に、強姦幇助に果ては殺しまで、貴族がやらかしたり裏で手を引いている数々の暴虐の沙汰に唖然としつつ読み進めていきましょう。といっても権力と暴力は相性がいいのだから、当然と言えば当然か。
 歴史書をベースにしているわけだけれど堅苦しくなく、右大臣の「愚か者の中の愚か者」など辛口な日記と、時節差し挟まれる筆者の妙にもっともらしい感想が読んでいて愉快な感じ。
 一見、数ある暴力事件を羅列しただけの構成にも見えるけれど、読み進めていくと、その暴力沙汰の背景にある微妙な陰影がわかってきて面白い。
 皇女が強盗に襲われ、路上で犬に食い散らされてしまう荒唐無稽な最期の裏には、法皇の隠し子という彼女の出自の複雑さと、さる高位貴族による揉み消しの可能性がある。
 投石や拉致監禁など敦明親王の言語道断な振る舞いには、藤原道長の策略により天皇となることができなかったことの鬱屈、さらに道長一族や彼のの後ろ盾を持つ下級貴族にまで侮られ、荘園などの利権をないがしろにされていたため、債権確保や面目維持のための実力行使という側面がある。
 一方で、凋落した皇后と寵愛される妃の女房たちはいがみあい、有力貴族の後ろ盾を持つ后の女房は息子の罪の帳消しまでをも厭わず、権力の絶頂にいる摂関家の息子たちは、決して反撃を食らうことのない身分の低い者たちをいたぶって何の罰も受けない。
 身分社会や貴族の階級秩序など、今とは少々異なる価値観のもとで繰り広げられた暴力事件は、優雅でたおやかな文学作品だけでは知ることのできない平安時代のひとびとの考え方や行動理念の一側面を理解する一助にはなるかもしれません。とりあえず、数多の暴力事件の裏に潜む、政治力学と権力の陰翳と階級社会の妙は読んでいて楽しいです。

 ついでにたおやかなイメージしかない平安時代についてのもう一冊ということで、講談社『日本の歴史』シリーズから平安時代を扱った「武士の成長と院政」を。
 軍事史と全国統治機構の変遷から見る平安時代。淡々とした筆致だけれど、中身は熱い!平安時代は次の時代の主役となる武士が徐々に力を持っていった時代でもある。平将門は英雄というより結構な苦労人だなあとか、源氏のベタな感じの主従関係の作り方とか。ついでに天皇を中心とする王朝政府から鎌倉幕府という軍事政権に変わる流れも、なんとなく納得できました。

 全然関係ないけれど藤原実資×藤原頼通は、ありだと思います。参照→wikipedia
* 2010/05/26(水) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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