÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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ヴァインランド
ヴァインランド
トマス・ピンチョン 新潮社

 ピンチョン、ピンチョン、ピンチョン!
 というわけで、初ピンチョン小説です。スタートレックなどTVドラマや、軽音楽、映画にサイケなサブカルチャーなどアメリカンポップカルチャーをふんだんに取り入れて、なぜだかニンジャや「おまえはもう死んでいる」状態の得体の知れない日本人まで出てきて、幽霊やエリート検察官やかつてのフラワーチャイルドや売り出し中パンクロッカーまで巻き込んで、娘のプレーリィが映画監督かつ革命家であった母親を捜していく冒険小説。
 あらすじ。あまり意味がないので省略。ゴジラやニンジャが大活躍です。
 最初読んでいると、どこで筋が繋がっていくのか分からなくて、急な場面転換やよくわからないアメリカンカルチャー語りや唐突な語り手の交代に戸惑うのだけれど、だんだんその文章のきしみがやがて、微妙にずらされた文章たちの摩擦熱によるエネルギーになって、どんどん読み進めて楽しくなってくる不思議。
 とにかく色んな要素がごった煮で、そのどれもがバラバラのようでありながら、書かれていない奥の方でどこか繋がって何かを作り上げている、そんな感じの小説。

 この小説のキーパーソンである、ゾイドの妻でありプレーリィの母であり、権力に荷担しながらその被害者でもあるフレネシ。祖父の代からの革命家であり、芸術によって権力を暴こうとする映画監督である彼女は、しかしその映像によって権力の片棒を担ぐ手助けをしてしまう。権力の悪を暴く革命の道具だったはずの映像は、やげて革命を自壊させるための道具となり、ついには民衆を洗脳するための娯楽たっぷりの権力装置となってしまう。
 という筋書きなんだけれど、テレビや映画が好きな現代人から見れば、やっぱり映像媒体は面白いんだからしょうがないよなあ、という感じもしないでもない。
 面白かった登場人物はフレネシのいた大学での学生運動の中心人物になってしまったウィード。基本的にはゆるくてダメな感じのキャラクターだけれど、彼が同僚のレックスと語り合うあり得たかも知れない回想シーンや、鉄道に乗って終わりのない旅のなかで自分を本当に殺したのは何者なのか探す夢のシーンは、非常にシリアスかつ叙情的な感じで素敵です。
 ところで、ついドラマのキャラクターを演じたりテレビ番組にたとえてしまう重度のTVマニアであるヘクタは病院行きですが、これよりもさらに濃いような日本のオタクたちが人生を満喫しているのを考えると、なんか笑えます。

 そんなこんなで迎える大円団のやたら爽やかなラストが素敵。500ページもかけて追ってきた生身の母親との再会はすでにかすんでしまい、シンデルロになってしまったウィードはプレーリィとデートするし、DLとタケシはちゃんとセックスできたし、「ビリー・ゲローとザ・ヘドーズ」はロシア人を仲間に入れて人気爆発だし、ブロックは骨を抜かれてしまったし、そしてプレーリィはレッドウッドの森のなかで飼い犬に舐められてようやく家(ホーム)に帰ってきたのだとわかるのです。
 いつ清算されるのか分からないカルマを思い出させるように、巨大企業チプコの研究所を破壊するために空から降ってきたゴジラの足跡。自分の人生では清算されなかったカルマを薄暗く嘆くシンデルロたち。そんなカルマを、来世からの前借りや繰り延べで矯正を行おうとするタケシとDL。一度書き上げられてしまった人生、そしてアメリカの歴史を、もう一度パラノイア(妄想過多)気味に眺めてみれば、そこにはとんでもないものが潜んでいたのです!
 ピンチョンの政治批判やドラッグについてのくだりは、いまいちよく分からないけれど、『アメリカ』を影で支え操ってきた構造を解き明かそうとして、でもはっきりとは描かれない何かが、『競売ナンバー49の叫び』と共通するようで楽しかった。なにやら陰謀小説のようなにおい。

 そんな「ヴァインランド」の日本バージョンがあったら、是非読みたいなあ。マンガやアニメなどのサブカルチャーを深く読み込んで、萌えキャラたちが飛び回るなかでその存在を『日本』の中にどう位置づけて、50年代あたりからどうやってその構造を歴史的にも追ってくれるのか、そんなデカくてバッドなラッダイト小説が読んでみたいです。

 さすがにまだ『重力の虹』に手を出す勇気がないので、さしあたって次は『V』あたりで。

* 2009/08/27(木) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0

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