÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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博士の異常な愛情
博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
 スタンリー・キューブリック監督

 キューバ危機とほぼ同時代に作られた映画。ひりひりと張りつめるような核抑止力の緊張の中で、これを笑って見られるのかというと疑問。冷戦も今は遠い現代から見れば、未だ強烈な毒を含むブラックユーモアたっぷりの愉快な映画。どこかでありえたのかもしれない歴史を描く、軽く世界滅亡もの。
 アメリカの狂った一軍人の命令によって引き起こされるソ連への核先制攻撃。そして自動報復装置による世界の終わり。ラストは核の花が咲きながら、『We'll meet again(また会いましょう)』と脳天気な歌が流れて唐突にエンド。もう笑うしかないじゃないか。幻のパイ投げシークエンスはちょっと見たかったけれど、やめて懸命だったと思います。ついでに、核爆発画像に歴戦をくぐり抜けたのちアメリカに接収された軍艦「長門」が出ていて哀愁を醸します。
 アメリカ首脳陣が集まる会議室のセットも素敵。外の様子は一切見えず、てんでバラバラでまとまらない命令だけが飛び交うのは、まるで本当の脳内のよう。
 印象に残ったのは、セラーズの一人三役。演技も上手いし、演出でも効果的。一人目は狂った上司(この人が全ての発端)を押しとどめようとするイギリス軍将校マンドレイク大佐。二人目は、事態を何とか収拾しようとするアメリカ大統領。三人目は、ドイツから亡命してきたと思しき怪しげなストレンジラブ博士。(史実として、この時期のアメリカは冷戦で勝つためにドイツの優秀な技術者をたくさん引き抜いている)自分でも制御できない黒い革手袋をはめた右手を持ち、つい「わが総統!」とか口走ってしまう危ない人。一人で演じるこの三役が、必死に止めようとしながら楽しそうに滅亡へと突っ走っていく、危うい人類の象徴のような感じ。

 で、この映画にもまたカウボーイ(これもセラーズが演じる4人目になるはずだった)が出てくる。今度の乗り物は『核兵器』。もちろん最初から様々なイメージで示唆れているとおり、その腰の下のでっかい兵器はメタファーでもある。(撮る角度がまたえげつない)最初の空中給油シーンとか、秘書との密会とか、『体液』が脅かされているという話とか、明らかに性行為を示唆しているそれらのシーンが示すものは、戦争遂行の重要な決断時に占める『男らしさ』の誇示というくだらなさ。(で、それにこだわる奴らがまた男に妙になれなれしいのがあれだよなあ)
 この延長で、地下の核シェルターに避難しようと計画を立てている時に、異様に繁殖行為(男1人に女10人をあてがって子孫繁栄!)にこだわるのも非常にまっとうな流れではある。オスとしてのセクシャルアピールを見せつけるための戦争とセックス、破滅と豊饒の相反する二面性がもたらす世界滅亡と未来への意欲。その壮絶なばかばかしさに笑ってしまえ。

それではまた来年!
* 2008/12/26(金) # [ 映画感想文 ] トラックバック:0

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