÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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 マーティン・スコセッシ監督

 直前に見た『イージー・ライダー』と較べると、来るとこまで来てしまった感のある映画正直、この作品を見た後には『ロッキー』がものすごく必要になるアメリカ人の気持ちがよく分かる。個人には無限の可能性がある!努力は報われる!スポ魂万歳!エイドリアン!
 この作品もやっぱり何かに乗って走る(西部劇のスタイルは欠かせない)。今度はバイクじゃなくてタクシー。監督だったか脚本家曰く「孤独な鉄の棺桶」とのこと。走る場所は現代都市ニューヨーク。たくさんの人とあらゆるものが集まっている。汚いもの(セックスとか薬とか暴力とか)にまみれた街を洗い流すように雨が降る。多くの人が行き交い、出会うが、誰も理解してくれるひとはいず、孤独が人々を覆う。曲がりくねり錯綜する道を縫って、主人公トラヴィスはタクシーで走り続ける。
 サックスの甘い調べと、シンセサイザーの無機質で危なげなメロディの組み合わせがテーマ音楽だけれど、両者の駆け引きによる緊張感がまたうまい。ラスト近辺でも非常に効果的に使われている。
 ニューシネマ末期ということで、お約束のアイテムも主人公と距離を取って描かれる。セックス→ポルノ映画の中、トラヴィスが助けようとする売春婦が他の男とする、ということで主人公に直接は関係ない。薬→ドラッグじゃなくて不眠症のための薬。暴力→あれだけの暴力シーンを描きながら、『力』それ自体さえも主人公自身に明確に内在するものではない。タクシー客の言葉『マグナムで妻を撃ち殺してやる』や主人公が自己投影するSPから与えられたモチーフである。あと直接は描かれないベトナム帰還兵であるという推測。ということで、これもやっぱりひねくれたニューシネマの形。
 好きなシーンは、トラヴィスが三角関係を演じる陳腐な恋愛ドラマの画面を踏みつけながら、テレビに銃を突きつけるシーン。この都会の中で、何の役にも立たないそんな嘘っぱちは蹴り倒してしまえ。
 ラスト近辺での残虐シーンは非常に苦手なのですが、何しろ迫力がある。俯瞰シーンとか死体の握る銃を追っていくカメラとか、サックスでのメインテーマの崩れたメロディなど、印象的なシーンもとても多い。(トラヴィスの頭を打ち抜く最後の銃が、彼自身の指であるあたりも)
 とにかく上手くて面白いなあ、と思っているうちに過ぎた120分でした。

 これはニューヨークでの物語だけれど、『都会』というモンスターのようなメガロポリスには共通する部分が多くて鬱々とした気分になる。
 出てくる主要人物もみんな孤独を抱えているが、この作品の中でトラヴィスと他者のコミュニケーションは一切成功していない。アプローチをかけた女性には嫌われる。彼が(身勝手に)救おうとした娼婦の少女にも裏切られたまま、その後の交流はない。そして彼も他人を理解しない。
 なんにもない主人公の部屋には、断片的な他人の言葉(選挙ポスターなど)が散らかっているだけ。あきれるほど空っぽな主人公が、現状に対する漠然とした焦りと圧倒的な孤独の中で、都会に溢れる様々なモチーフを吸収しながら狂気に侵されていく筋立ては、内面からじわじわと責めてくるようで地味にくる。主人公の髪型の変遷や、武器改造や、修行シーンなど、男の子心をくすぐる演出は魅力的だけれど恐ろしい。狂気maxのモヒカン時の目つきはとんでもなくやばいし。
そして彼の狂気は破滅という『結末』をつけることさえ許さず、どこかにあったのかもしれない善意や夢や希望までも呑み込んで、えんえんと流れ続ける。最後に彼が英雄になったのは、銃の配置など単なる偶然の結果(あるいはアメリカ社会が歪んでいたから?)に過ぎない。イージー・ライダーはアメリカを横断する一本道のような一方通行だったけれど、この作品は複雑な都市を巡るような円環構造という解釈でよいのかな。
 最後の場面はそのまま『ふりだしに戻る』トラヴィスの髪型は普通に戻り、あいかわらず理解してくれる人は現れず、全く孤独なままで、タクシーはOP同様汚らしい街を洗い流してもくれない雨の中を走り続ける。そしてまた彼が孤独の中で狂気への道を辿り、凶行を犯さない保証は何もない。
* 2008/12/16(火) # [ 映画感想文 ] トラックバック:0

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