÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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「バナールな現象」似非考察メモ
バナールな現象
奥泉光 集英社文庫


○はじめに
 本の内容に大幅に言及します。未読の方はご注意を。
 唯野教授に叱られそうな素人の印象批評だが、つらつらと考えていきたいと思う。ちなみにこの本の元ネタ「個人的な体験」(大江健三郎著)は、既読。



○まず
 内容を大まかに言えば、メタフィクション的「妊娠小説」になるだろう。一つ目は妻の流産。もう一つは、「恋子」の堕胎。この二人の妊娠が作中での鍵となる(と思う)。
 日記を書くこと、回想すること、語ることによってどんどん分裂していく現実。語れば語るほど、広がっていく砂漠。そこに絡んでいく(らしい)湾岸戦争の影。
 旧約聖書の倫理の話、日本人論、夢と現実の区別など、様々な話題が出てきて、結論は出ないまま物語は唐突に幕切れ。
 あたり一面砂漠である。と、最初と最後が循環する。

○時系列(木苺の自覚していること以外は括弧内)
8月3日 日記を付け始める 「オトーサン誕生」 西早稲田風に部屋を改装(影の日記では夫婦で海老を食べる 恋子によると、海老を食べた後、初めて二人が関係を持った日 イラク、クウェートに侵攻)
8月4日 (影の日記では、妻が流産)
(支倉の報告書より、10月頃から西早稲田に移住。ピンクの女と半ば同棲生活を送る。)
1月17日 (影が日記を書く 湾岸戦争開始)
(ピンクの女が日記を読み、堕胎を決意)
2月27日 (物語の始まりの日)大学から地図を買いにデパートへ、その後「呪いの海老」鑑賞(ピンクの女が堕胎手術→日記が書き換えられていることを知る)
2月28日 学会出席後、色々あって西早稲田へ向かい、支倉と面会後、三鷹の路上で寝る
3月1日 出産予定日 予備校に行った後、西早稲田で日記を見て、新宿でピンクの女と話した後、デパートへ(湾岸戦争終結)

○小道具類
 作中には、意味ありげなメタファーが山ほど出てくる。アフリカの地図・海老・鴉(他の奥泉作品でも鴉の比喩ははよく出てくる)・恐竜・梅酒・砂漠・12人のアラビア人・棍棒・「旧約聖書」の一部分・酸性の液体が噴出する洞窟など。メタファーなのであくまでも漠然としたものだが、海老は嫌悪感を表すと同時に胎児としての意味もあるのだろう(冷蔵庫で保存されているのが少しずつ腐っていく描写など)。梅酒は楽しそうな家族の場面で出てくるので、家族の愛情というところだろうか。あと、日記を書くためのツールであるワープロのOASISも重要な意味を持つだろう。

○影
 木苺の友人として表される「影」。影と木苺の記憶は似通っているが、大から小まで様々な点で相違もある。湿疹が治ったのが、友人が溺れるのを見たのが切っ掛けである木苺、自身が溺れたことによるのが「影」。父親の介護を行い、その手術ミスによる死までを看取った「影」と、イスラエルへ旅行中に父親が死んでしまった木苺。
 最後に「ぽっぽちゃん」(木苺のあだ名の一つ)と呼ばれながら、鴉に馬乗りになっている姿は「影」としての木苺の消滅を暗示しているのだろうか。

○個人的な体験
 大江健三郎の「個人的な体験」を換骨奪胎してできたのが、「バナールな現象」である。主人公の名前は、鳥(バード)、生まれてきた巨頭症の子供を育てることを決意するまでを書いた、実存風味小説。
 作品に出てくる、特に関係のありそうなエピソードをいくつか挙げてみる。
 まず、火見子の考える「多元的な宇宙」。
 どこか(アフリカだったか?)の部族の伝承である「幽鬼強盗」。アフリカのある部族では、死んでしまった赤ん坊のことを、実は賽銭泥棒のために腹に宿った幽霊であり、幽霊だったのだから、元々死すべきであるとても美しい赤ん坊であったと考える風習がある。そのようなエピソードを火見子が語る。
 そして何より、冒頭で主人公が眺めている「アフリカの地図」。これは、鳥(バード)の叶うことのないアフリカへのあこがれであり、胎児の姿でもある(アフリカの形が頭蓋骨に似ていることから)。結局いつまでも地図を買うことの無かった木苺と、部屋に地図を飾っている「西早稲田の男」が、この地図によって対比されている。

○弁解
 結局テーマ設定がないので考察というより、思いつきのメモ程度の文章になってしまった。例の如く、分からないことだらけだった。特に、小説の筋と湾岸戦争との絡みなど。そういえば、いくら考えても20万円の帳尻が合わない。
 意見・批判・間違いがあれば、コメント・メールフォームなどから指摘してください。

○最後に
 丸茂先生による分娩シーンが見てみたかった。
* 2005/09/18(日) # [ 考察 ] トラックバック:0 コメント:0

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