÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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八月の砲声(下)
八月の砲声(下)
バーバラ・W・タックマン ちくま学芸文庫

 上巻は政治中心の記述だったが、下巻は戦闘中心の記述。フランスの退却からマルヌ会戦が始まるまでを描く。ちなみに、マルヌ会戦によって、連合軍は戦況を覆すことに成功し、これによりあのえんえんと続く塹壕戦へと両軍が落ち込んでいくことになる。
 イギリス司令官のやる気のなさにびっくりしながら、ロシア軍の不思議さが笑える。戦闘準備に間にあわなかったり、敗北を重ねたりしつつも、ロシアが果たした役割は大きい。迅速(?)に動員を進めたことで、ドイツ軍を東部戦線にひきつけ、またロシア軍ならではの不思議なうわさが、参謀本部を翻弄したり。でもこんな感じ。
生まれてはじめて飛行機を見たロシア兵は、機の国籍も確認せずにいっせいに小銃で射撃した。そんな気のきいた空飛ぶ機械などは、ドイツしか持っていないと思いこんでいたのだ。下士官兵は黒パンと紅茶を大量に消費したため、はっきりした理由はわからないが、馬を思わせるような特殊な臭いを発散した。
 肝はやっぱり、最初の大激戦マルヌ会戦への道のり。各将軍の個性にあふれた言動が、どのように戦いを動かしていくかが、丹念な描写でよくわかる。「憂鬱なカエサル」モルトケや、簡潔な動作と果断な決断力でパリ防衛の要となるガリニエ。ひたすら攻撃せよの「17計画」の推進者であり、退却時も決して揺るがなかったジョフル。正しかったがゆえに更迭されざるを得なかった皮肉なランルザック。個性豊かな軍人たちが動かしていく戦争。 第1次世界大戦って、日本人にはあまり生々しく感じられないので、なんだか物語を読んでいるようで、不謹慎だが面白い。
 前半部分は戦記を読みなれていないので、軍の行動軌跡などが少し読みにくかったが、後半はなかなか楽しかった。
 最後に著者によるまとめがあるけれど、それが少し哀しい。
なんとか決着を見るまで戦い抜けば、より秩序ある世の中の基礎が築かれるという希望である。争は人類になにかよいものをもたらすにちがいないという希望だけにすがって、兵も国民も戦いをつづけたのだった。
 ついに戦争が終わったとき、ひとびとの希望とはうらはらの種々さまざまな結果が生じた。そのなかに、他のすべての結果を支配しかつ超絶したものがあった。―幻滅である。それは1914年代以前に世に認められていた偉大な言葉や信条が、その後ふたたび同じ意義を持ち得ないと知ったからである。
* 2008/07/04(金) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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