÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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空気頭
田紳有楽・空気頭
藤枝静男 講談社文芸文庫

そのころの私には、書くべき「自分」などどこにもなかったから、書きようがなかったのである。
 私はこれから私の「私小説」を書いてみたいと思う。

という内容から始まる不思議な「私小説」
 第1部は病気がちの妻との闘病生活を描く。
 第2部は愛欲が盛んなのにかかわらず性欲減退に悩まされる「私」が媚薬を精製し、さらに表題の「空気頭」への実験へと進んでいく話。ちなみに、空気頭とは脳に空気を入れて、ふわふわとした心持ちになること。もちろん、フィクションである。
 第3部は日記調の話。地味なままラスト。

 作者は医者なので、第1部と第2部に医学的用語がそこかしこに出てくるのが、奇妙な味わいで面白い。
 基本的に、一部は普通の私小説という感じで、一応現実に即して出来事が語られる。墓を一生懸命に磨いていたら妻に墓に入るのを断られるシーンと、「夫婦は二世か」と呟くシーンの対比が上手い。
 そして第2部の飛躍ぶりが読みどころ。下ネタ満載の媚薬精製法が、実は主人公の家系それ自体の悩みにもつながり、想像力というか妄想によって膨れ上がった「私」が引き起こす奇妙なリアリティ。さらに性欲という生まれつきの枷を乗り越えるための空気頭実験によって、「私」は私を離れて、上から「私」を見つめて解放されるようになる。
 第3部は地味だけれど、この小説を読む手がかりになるような気がした。ベトナム戦争のルポ映画で描かれる一人の人間の多面性。そして、誰にでもそれがあり得るという共通性。また、「人格」という個性は、生得的な気質に対する抑圧の結果にすぎないのではないかという疑い。
 私「小説」の「私」って何なんだろうなあ、とふわふわと考えたくなるような小説でした。
 一番印象に残ったのは、妻の病気のことを冷静に見つめながらも、それを医学の力によって二人で乗り越えようと言う文章が書かれたすぐ後の段落。
今日は妻の死んだときのことを楽しく空想した。
実は、もう第1部から「私」は破綻しかかっているという罠。
* 2008/05/02(金) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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