÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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戦うハプスブルク家
戦うハプスブルク家 近代の序章としての三十年戦争
菊池良生 講談社新書

 一応ヨーロッパ史で扱うし、何やら国家の形成に関わる大事な戦争だとは知っているのだが、実際のところよくわからない30年戦争について扱っているので読んでみた。
 結論として、非常に面白かった。
 ただ、17世紀前半のヨーロッパについて、多少の前提となる知識を持っていた方がよいと思う。地名や固有名詞が特に断りもなく多用されるので。登場人物の名前だと割り切ってしまえば、それはそれでよいと思うが。久しぶりに地図帳を持ち出して、眺めてみるのもまた一興。
 あらすじというか、概要。中世は終り、宗教改革の嵐が吹き荒れ止まぬ頃。現れるは、唯一の君主による秩序のもとに治めんとする普遍主義。ヨーロッパの天下統一を目指す、神聖でもローマ的でも帝国でもない神聖ローマ帝国の王であり、スペインを領土とするハプスブルク家。その野望に対してヨーロッパの強国フランスは危機感を抱く。そして、ドイツ内の諸候もまた、ドイツ憲法に背きひとり強大化するハプスブルク家に、時に対立し、時にすり寄る。
 入り乱れる陰謀。神も背を向く宗教対立。最強にして最後の傭兵隊長ウァレンシュタインのつかの間の夢とその死。北方の雄スウェーデン王のグスタフ・アドルフの破竹の快進撃。食えないフランスの宰相リシュリューの各国をも巻き込む卓越した外交手腕。混乱する世界で覇権を握るのは誰なのか。諸諸の権力を統一してできあがろうとする国家形成の流れは戦争にどのような影響を及ぼすのか。
 30年もの破壊と混乱の果てに出来上がる新たな世界秩序。しかし、それはつかの間の平和によるより大きな世界戦争への序章へと繋がっていくのだった。to be continued.

 という下手なスペクタル映画よりも、よっぽど手に汗握る展開が待っている30年戦争。
 国家という近代システムの樹立や宗教と政治の関わりかたといった社会システム的視点、ハプスブルク家やフランス王朝や各ドイツ選帝候といった各家系の思惑による視点、キリスト教の教えを守り抜こうとする貴族や野望持つ傭兵隊長や時代にあえなく流される皇帝など個人史的視点、そのどれから見ても、ダイナミックな動きが感じられて面白い。
 戦争が続くうちに、その戦争による変化でそれまでのやり方が通用しなくなってしまったり、そもそも戦争の目的自体が見失われてしまったり、最後には増えすぎた兵士を養うためとここまでやった以上途中で引き上げるわけにはいかないという面目が両国を動かすようになる、といった当事者の意思を外れて自律的に動きだす歴史の流れがおかしい。当人たちにとっては笑いごとではないんだろうが、無責任な極東の見物人からすれば、派手で大規模で少し勉強になるイベントのような気がする。
 これ以降確立される国家という組織がひきおこす第1次大戦までの流れや、序序に芽生える絶対主義の中にきざしている革命の息吹など、次への歴史的大事件へと繋がっているのが分かり、今まで知っていた他の時代もより深く知ることができるきっかけになると思う。同様にこの30年戦争も、発端となったベーメン地方の反乱という直接的原因の底流にはそれまでのドイツの歴史、宗教的価値観、などなど長いヨーロッパの歴史を包含する一つの事件なのである。というわけで、ローマ史から中世・ルネサンス・宗教改革ともう一度勉強し直してみようかな、という気になった。
* 2007/10/24(水) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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