÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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フランツ・カフカ 新潮文庫

 有名な不条理文学。暗くて鬱々としている話なのかと思っていたが、意外にあっさりとしていて面白かった。
 あらすじ。ザムザはある朝起きてみると、自分が虫になっていることに気が付く。保険外交員として働いているザムザは出勤しようとするが、虫になってしまったためうまくいかない。やがて家族や雇い主に虫になってしまったことがばれてしまい、色々な騒ぎが起きる。
 あらすじだけ書くと、何となくコントみたいな感じがしないでもない。
 『虫』が何の象徴なのかは置いておき、『虫』となってしまったザムザの有り様や、家族その他周辺の人々の関わり方で見ると、読みやすい。ザムザ自身は未だ普通のつもりなのだが、外見が『虫』となってしまったために、周りからは誰もそれまでの人間として扱ってもらえず、恐ろしく気持ちの悪い何かとして遇される。家族はかつてのザムザの面影を追いながら、全く違うものになってしまったザムザをただ忌避する。ザムザが何かを伝えようとしても、他の者は『虫』が意思を持つはずがないとして、そもそもコミュニケーションをとろうとしない。そんな風に扱われている内に、ザムザも『虫』としての自分に馴染むようになっていく。ザムザを全くおそれないのは家政婦だけだが、それは彼女がもとから彼を人間として取り上げず、ただ『虫』と接しているからだけである。
 何より報われないのは、それまでザムザが家族のために頑張って働いていたことが、家族にとって最善ではなかったかもしれなかったことだと思う。ザムザが頑張るゆえに、家族はそれに甘え、よりかかる。ザムザが『虫』になるという窮地に陥ったことで、家族はむしろ自立を果たしていく。そして妹の留学のための計画は最後まで伝わらず、『虫』になった今となっては、その思いもただの悪意として解釈されてしまう。
 痴呆症(今は認知症か?)とその家族の介護のような問題にも通じるような気がした。ある日自分でも分からないうちに、今までの自分とは違うものになってしまう。変わってしまった側にも、理性というか人格が普通にあり、それまでの暮らしを続けていきたいのに、全くコミュニケーションがとれない中で、ただただ疎外されていく『虫』として扱われる。家族の側の対応もひどいように見えるけれど、介護する側の視点からすると、全く分からないわけでもないし。最後の希望あるラストが、嫌なくらいリアルで哀しい。というわけで、今の時代でも、もっと読まれたらよい本だと思う。
柔らかい埃にすっかり覆いかくされた背中の腐った林檎やその周囲の炎症部の存在もすでにほとんどそれとは感ぜられなかった。感動と愛情とをもって家の人たちのことを思いかえす。自分が消えてなくならなければならないということにたいする彼自身の意見は、妹の似たような意見よりもひょっとするともっともっと強いものだったのだ。こういう空虚な、そして安らかな瞑想状態のうちにある彼の耳に、教会の塔から朝の三時を打つ時計の音が聞えてきた。窓の外が一帯に薄明るくなりはじめたのもまだぼんやりとわかっていたが、ふと首がひとりでにがくんと下へさがった。そして鼻孔からは最後の息がかすかに漏れ流れた。
* 2007/10/17(水) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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