÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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金閣寺
金閣寺
三島由紀夫 新潮文庫

 学僧が金閣寺に放火した事件を題材にした小説。数年前に見た金閣寺は立派に再建されており、修繕が終わった直後だったので金箔が真新しく、金ぴかでした。
 あらすじ。吃音で引っ込み思案の主人公は、幼い頃から父親に金閣寺のことを聞かされて育つ。主人公は現実に金閣寺を見、その圧倒的な美に心を打たれる。やがて父が亡くなり、主人公は金閣寺のある鹿苑寺で僧となるための修行をする。快活で健康的な鶴川や、内飜足で斜に構えた柏木らと出会い、主人公は様々な経験を経て、やがて金閣寺を焼く決心をする。
 あらすじだけを見ると意味が分からないけれど、読んでいくうちに金閣寺を焼くという行為が何となくあり得るのかもしれないと思わされるあたりが面白い。三島由紀夫は、頭の良さそうな文章を書く人だという感じがした。鋭利な言葉でばっさばっさと切り開いていくような描写が良い。
 たくさんの印象的なエピソードを積み重ね、理論的な思考(破綻気味)を組み上げていくことで生まれるラストの破滅までの構造が美しい。そういえば、回想で出てくるヒロイン(?)の「有為子」も意味ありげな名前であることだし。
 今回の引用は、ラスト近辺での全ての美しさを含む金閣寺の描写から。ここまで理屈っぽく何かを愛している描写もなかなか見ない。まさに現実を超えて意識とつながり、言葉にすることで生まれる美しさ。実際はさらに長いので、一部抜粋。
(前略)美は細部で終わり細部で完結することは決してなく、どの一部にも次の美の予兆が含まれていたからだ。細部の美はそれ自体不安に充たされていた。それは完全を夢見ながら完結を知らず、次の美、未知の美へとそそのかされていた。そして予兆は予兆につながり、一つ一つのここには存在しない美の予兆が、いわば金閣の主題をなした。そうした予兆は、虚無の兆しだったのである。虚無がこの美の構造だったのだ。そこで美のこれらの細部の未完には、おのずと虚無の予兆が含まれることになり、木目の細い繊細なこの建築は瓔珞が風にふるえるように、虚無の予感に慄えていた。
 それにしても金閣の美しさは絶えるときがなかった!その美はつねにどこかしらで鳴り響いていた。耳鳴りの痼疾を持った人のように、いたるところで私は金閣の美が鳴りひびくのを聴き、それに馴れた。音にたとえるなら、この建築は五世紀半にわたって鳴り続けてきた小さな金鈴、あるいは小さな琴のようなものであったろう。その音が途絶えたら……
* 2007/09/23(日) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

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