÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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野獣死すべし
野獣死すべし
村川透監督

 テレビで放送していたので何となく見てしまった。松田勇作主演版。原作小説はハードボイルドだけど、この映画はノワールっぽいクライムもの。
 あらすじ。警察官を刺殺し銃を奪い、カジノで強盗殺人事件が起きる。その犯人はヴェトナムなど数々の戦場で地獄のような情景を撮り続けてきた元ジャーナリストの伊達であった。更に銀行強盗を計画する彼は、レストランでウェイターとして働く青年、真田と出会う。二人は正反対の性格ながらどこか通じ合うものを感じ、以後行動を共にするようになる。
 なんとなく「タクシードライバー」を思い出させるような筋ですが、クラッシック音楽の使い方とか、差し挟まれる(あまりにも)意味ありげな戦場写真など、若干野暮ったく思われるものの、そこもまあ憎めない感じではあります。
 やっぱり松田勇作の死んだような目が、この映画の一番の吸引力でしょうか。角川映画ということで溢れ出すトンデモ感も、誇大妄想のような狂気と相まって引き寄せられます。怒りを留めてはいられない真田の鬱屈の原因やヴェトナム戦争など、どこかに透けて見えるアメリカへの怨み節もアレな感じで、全体的にはかなり満足でした。
 理由なき犯罪たちは、彼が戦場で見たどんな残虐な現実もあり得るのだという無秩序そのものの世界と、現代日本の秩序だった誰もが平和に暮らしていられる日常世界と、その二つのあまりにもの落差に穴を開けるための凶行なのかなあと思いました。そんな彼が、『秩序』そのものとも言える西洋起源のクラッシック音楽だけを淫しているといえるほど愛しているのも、また矛盾していて、そこに危うい魅力があります。
 真田に恋人を殺させ、狂った演説を施し、それでも思い切れない真田へ銃を放って自分に向けさせ、野獣へと仕立て上げた瞬間の二人の関係は、大げさな演出と相まって最高にエロくて素敵(それまでのいまいち噛み合わない会話とかも含めて。それに昔から銃というのは性器のメタファーなんだし)
 白い服着てクロスのアクセサリーをかけてた小林麻美は、特に目もくれられずにあっさり死ぬところが良かったです。こういう映画では、きれいな女の人はやはりこうでなくては。
 案の定殺されちゃった銃の密売人のシーンや、心臓に悪すぎるリップ・ヴァン・ウィンクルのシーケンスも秀逸。
 と、終盤までの流れが緊張感がみなぎって面白い分だけ、列車で狂気を爆発させてからラストの間までのシーンはよそでもちらほら見かけるように、ちょっと投げやりすぎだと思いました。(もしかするとこのあたりから幻覚にあたるシーンなのかもしれませんが)
 一旦夢オチかと思わせて、現実なのか幻覚なのか曖昧なラストはなかなか良かったです。リップ・ヴァン・ウィンクルのお酒は、ここでも効いてくるんですね。
「そう・・・『これで終わり』って酒だ!」
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* 2010/01/24(日) # [ 映画感想文 ] トラックバック:0
スタンドバイミー
スタンドバイミー
ロブ・ライナー監督

 少年たちの世界と、大人と、『死』を探しに行く話。
 あらすじ。ガキ大将のクリスと内気なゴーディと無鉄砲なテディと太っちょのバーンは、性格はばらばらだがいつも一緒につるんで遊んでいる。ミドルスクールに行く直前、12の夏休みのある日、ひょんなことからバーンは線路の先に少年の死体があることを聞く。4人は死体を見つけて有名になるために、小旅行に出かける。
 狭くて小さくて無力だからこそ、とても濃密な子供たちの世界が淡々とノスタルジックに描かれている。恋も酒も過度の暴力もないそれはほとんど少年たちだけで完結してしまいそうな感じ。
 とりあえず年相応にバカをやっている4人が可愛らしいので、それで良し。悪態を付き合っていても、テディはバーンの暢気さに、バーンはテディの無茶な勇気に、ゴーディはクリスの頼りがいに、クリスはゴーディの繊細さや想像力に、それぞれ救われるところがあったんだろうと容易に思われるところが切ないです。
 さて、全編にわたって感じられるのが『死』の気配。死体を探すのはもちろんだけれど、テディは汽車に轢かれかけるし、不良青年たちは死んでもおかしくないような自動車レースをするし、主人公のゴーディのまわりには優秀な兄の死がいつでもついてくる。無力な少年たちのまわりには、いつも理不尽な世界がある。
 ゴーディの兄は何の理由もないのに死んでしまい、テディは虐待を受けた精神を病んでしまった父親をあんなにも愛し、クリスは本人がどんなに頑張ってもろくでなしの家の子だと見られてしまう。青年たちもやっぱり無力で、彼らなりのやり方で自分たちを取り囲む理不尽なものに向かい合おうとしている。そんなどうにもできない理不尽なものを象徴しているのが、探しにいく突然事故死してしまった『死体』である。
 ラスト、自分の生い立ちあれこれになんとか負けずに弁護士になったクリスは、結局理不尽な『死』に呑みこまれてしまう。主人公にはもうあの頃と同じ12くらいになる息子たちがいて、もういない友達へのstand by meの哀切な訴えが響いて終わる。
 終盤の死体の取り合いのシーンでそんな理不尽な暴力を振り払うための、すなわち大人になるための第一歩のための一撃が、一発の銃声によるところがなんともいえずアメリカっぽいなあと思いました。

 こうまとめてしまうとアメリカ短編小説的なまとまりの良さが目立つけれど、あの頃の音楽に囲まれて、懐かしい景色や風景のなかで、実物の少年たちがあれこれ動き思い悩んでいる図は贅沢で素敵なので、そういうのが好きな方は是非。
* 2010/01/11(月) # [ 映画感想文 ] トラックバック:0
現代思想の遭難者たち
現代思想の遭難者たち
いしいひさいち 講談社

 マルクス・ハイデガーからポパーやロールズなど、現代思想の有名人たちやその思想をいしいひさいちが4コマでおちょくりたおす本。『現代思想の冒険』執筆者たちによる解説付き。思っていた以上に楽しくて、なんとなく現代思想についてもわかった気になれたので満足。構造主義とか現象学とか。解説付きなので特に知識はなくても読めますが、名前くらいは知っておくと、各所の小ネタが楽しいです。
 通して読んでみて、なんとなく思想には各国事情が反映されているんだなあという印象。フランスやドイツは、第1次大戦で近代理性に疑いを持ち、第2次大戦でのアウシュビッツなどの経験から、徹底的に近代理性に不信感を持ったなかで、再び倫理や知的基盤を作り上げるための苦闘のようだし。ロールズの正義論はそのまま、アメリカの功利主義的な資本社会の問題を修正するためのものだし。
 面倒くさいことは置いておき、とりあえず個性的で間抜けっぽくて愛嬌のあるキャラクターたちの掛け合いが愉快です。どれも一応実話や彼らの思想がもとだけれど、いい感じに消化されたキャラクターになってます。ハゲでホモで自意識過剰のフーコーとか、はぐらかしのデリダとか、フルボッコにされてよろよろの大マルクス先生とか。
 一押しは、消費社会に夢見るベンヤミンと気難しいアドルノ師弟。アドルノの文章は私には全く解読不能で苦手だったのですが、ドイツから亡命したものの、アメリカに馴染めずにいじけているこのアドルノなら許す。おお、偉大なるカラオケが苦手な者たちの代弁者よ!
 火かき棒とバットで戦うウィトゲンシュタインとポパーも楽しいよ。
* 2010/01/02(土) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0
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