÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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愛はさだめ、さだめは死
愛はさだめ、さだめは死
ジェィムズ・ティプトリー・ジュニア ハヤカワ文庫

 SF短編集。SFを読みなれていないせいか、よくわからないものも多かったけれど、全体的に見れば結構面白かった。生命存在の根底的なテーマを、透徹した視線から無駄のない筆致で描き出している。
 あと、最初の解説がとても面白いことになっているので、それも楽しい。
 以下、特に印象に残ったものについて。
「接続された女」
 とりあえず読者に呼びかける二人称を、オタクと訳すのをやめてほしい。
「男たちの知らない女」
 この話は、『異性人に連れ去られる女性』というSFのお約束を知っていないとよくわからないと思った。それを踏まえた上で読んでみると、ほかの作品との共通項が見えてくる。「産む性」と宿命付けられ、被支配者として扱われる女性。その逃走。パターンとなった原型を、鮮やかな形で反転している。つまらないパターンにしがみついているようでは、取り残されるしかないということなんだろうか。
「最後の午後に」
 一番ティプトリーのテーマがわかりやすく書かれていると思った。個人の意思を超えた種の存続の意思。繁殖と生存。そのおぞましさ。そして繁殖サイクルからの逃走。他のユーモラスな作品や、リリカルな作品にもこのテーマが潜んでいることが多いと思う。
 だからこそ崇高な使命感に突き動かされる主人公と、どこまでもおぞましく行動する醜い昆虫のような生物の根底にあるものは一緒のはずだ。
 個のエゴと種族の存続はときに利害が一致し、ときに衝突する。そしてそれは、どちらも個人の意思を超えたところにある。「たったひとつの冴えたやりかた」では、この宿命を徹底することと乗り越えることが、悲劇の中でも希望ある形で少女の側から描かれていたけれど、この話ではどこまでも容赦なく徹底される。最後の破滅はひとにぎりの救いもなく絶望だけれど、どこかすがすがしい。
「愛はさだめ、さだめは死」
 テーマはやっぱり「最後の午後」に共通するものだと思う。すごく題名どおりな話。本書の中では、一番面白かったと思う。下手に言葉で解説していないため、より真に迫っているというか。不思議な文体による異生物の生き様を読み解いていく楽しみもある。少し前に流行った「へんないきもの」を思い出す。生存と繁殖の多様なあり方と、その普遍性。
 原題は"Love is the Plan the Plan is the Death"
 「さだめ」という訳語はどこか熱っぽいけれど、この話には、話を構成する「抗えない情熱」に反する、冷たく徹底した言葉である"Plan"のほうがしっくりくると思う。
 この話の問いかけについて、ドーキンスの「利己的な遺伝子」が仮説を与えてくれるけれど、実際今のところの科学はどう考えているのだろう。なんとなく、科学書が読みたくなる短編でした。
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* 2008/07/08(火) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
八月の砲声(下)
八月の砲声(下)
バーバラ・W・タックマン ちくま学芸文庫

 上巻は政治中心の記述だったが、下巻は戦闘中心の記述。フランスの退却からマルヌ会戦が始まるまでを描く。ちなみに、マルヌ会戦によって、連合軍は戦況を覆すことに成功し、これによりあのえんえんと続く塹壕戦へと両軍が落ち込んでいくことになる。
 イギリス司令官のやる気のなさにびっくりしながら、ロシア軍の不思議さが笑える。戦闘準備に間にあわなかったり、敗北を重ねたりしつつも、ロシアが果たした役割は大きい。迅速(?)に動員を進めたことで、ドイツ軍を東部戦線にひきつけ、またロシア軍ならではの不思議なうわさが、参謀本部を翻弄したり。でもこんな感じ。
生まれてはじめて飛行機を見たロシア兵は、機の国籍も確認せずにいっせいに小銃で射撃した。そんな気のきいた空飛ぶ機械などは、ドイツしか持っていないと思いこんでいたのだ。下士官兵は黒パンと紅茶を大量に消費したため、はっきりした理由はわからないが、馬を思わせるような特殊な臭いを発散した。
 肝はやっぱり、最初の大激戦マルヌ会戦への道のり。各将軍の個性にあふれた言動が、どのように戦いを動かしていくかが、丹念な描写でよくわかる。「憂鬱なカエサル」モルトケや、簡潔な動作と果断な決断力でパリ防衛の要となるガリニエ。ひたすら攻撃せよの「17計画」の推進者であり、退却時も決して揺るがなかったジョフル。正しかったがゆえに更迭されざるを得なかった皮肉なランルザック。個性豊かな軍人たちが動かしていく戦争。 第1次世界大戦って、日本人にはあまり生々しく感じられないので、なんだか物語を読んでいるようで、不謹慎だが面白い。
 前半部分は戦記を読みなれていないので、軍の行動軌跡などが少し読みにくかったが、後半はなかなか楽しかった。
 最後に著者によるまとめがあるけれど、それが少し哀しい。
なんとか決着を見るまで戦い抜けば、より秩序ある世の中の基礎が築かれるという希望である。争は人類になにかよいものをもたらすにちがいないという希望だけにすがって、兵も国民も戦いをつづけたのだった。
 ついに戦争が終わったとき、ひとびとの希望とはうらはらの種々さまざまな結果が生じた。そのなかに、他のすべての結果を支配しかつ超絶したものがあった。―幻滅である。それは1914年代以前に世に認められていた偉大な言葉や信条が、その後ふたたび同じ意義を持ち得ないと知ったからである。
* 2008/07/04(金) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
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