÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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たったひとつの冴えたやりかた
たったひとつの冴えたやりかた
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア ハヤカワ文庫

 3つの中篇からなる、SFでちょっといいはなし。全体的に質が高く面白かったので、同作者の「愛はさだめ、さだめは死」も読む予定。
「グッドナイト、スイートハーツ」
思い出に残る初恋の人と、若く美しい初恋の人のクローン。三角関係のもっとも楽な解決の仕方。
「衝突」
ファーストコンタクトの話。相互理解のあり方が、試行錯誤や失敗を繰り返しながらもやがて手を取り合うことができるという、気持ちよい希望を感じる筆致で書かれている。カンガルーに似た異星人であるジラがかわいい。言葉の壁や、良かれと思ってしたことが通じなかったり、自分たちを守るためにしたことが悪いように取られたり、まずはコンタクトを取るまでが一苦労。命までかけた真剣なやり取りで生まれる絆が、読んでいてここちよいカタルシスをくれる。異星人との異種恋もあるのが、個人的にはポイント高いです。
 と言いつつもファーストコンタクトものだと、どうしても「ソラリス」が思い浮かんで、それと比べてしまうとやっぱり。いつかソラリスを超える作品を読んでみたい。
「たったひとつの冴えたやりかた」
表題作で、一番面白かったと思う。16歳の誕生日にプレゼントされた宇宙船で、内緒で初めての単独宇宙旅行に旅だつ女の子コーディー。冷凍睡眠から目覚めてみると、彼女の頭にはすこし臆病でやさしいエイリアンのイーアがすみついていた。その種族は、そのころ起きた宇宙船トラブルと関係しているらしい。好奇心から、コーディーとイーアは探求に乗り出すが。
 せりふの訳がちょっとあれだけれど、賢くかわいらしい16歳の女の子であるコーディーが魅力的。最初のコーディーの一人称の文章から、彼女の肉声がテープとして記述される外部視点に切り替わることで生まれる緊迫感が、ページをめくらせる。彼女の冷静な判断力と暖かい友情の末に生まれるとても潔い結末は、表題もうまく使われていて、面白くて哀しいファースト・コンタクトの話。
「これがたったひとつの冴えたやりかた」
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* 2008/06/27(金) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
錯乱のニューヨーク
錯乱のニューヨーク
レム・コールハース ちくま学芸文庫

 題名と表紙につられて。数々の大きなプロジェクトに携わってきた一流建築家がつづる、ニューヨークのバイオグラフィ。こう書くと地味だけれど、中身はすばらしくセンスが良くて面白い。
 欲望をかなえる人工の美女、常に不安定に変化を続ける女優、マンハッタン。隣接するコニーアイランドでの奇想天外な実験を終えたのち、外見と機能が分離した孤独な摩天楼という都市が花開く。マンハッタンの「過密」という魅力にとりつかれ、解消する振りをしながらより一層押し進めていく建築家達。そして世界恐慌による安価な労働力と有り余った時間を背景に、理想主義の建築物ロックフェラーセンター、マンハッタンの象徴ともいえるべき存在が建設される。ダリとコルビジェによるヨーロッパの反逆は、あえなくNYの中に呑み込まれていく。
 題名から察せるとおり、センスある言葉の選び方に惚れ惚れする。そして建築家としてのエッジの利いた文章。内容はもちろん、文章それ自体もとても楽しめる。こんな感じ。
マンハッタンの2028個の各ブロックはどれも潜在的に一艘の方舟として―あるいはたぶん阿呆船として―、たっぷり快楽主義を味わった挙句の贖罪への要求と約束を掲げて乗組員を募りながらさまようことができる。
 こうした豊かな状況の中で、これら方舟たちは累積的なインパクトをもたらして、一種の楽観論(オプティミズム)を生む。こうした方舟があるおかげで、破局(アポカリプス)の可能性は陳腐なものに見えてしまうのである。
 挿入されている多くの図版はイメージを誘うし、摩天楼ドレスとそれぞれを代表する建築物の帽子をかぶって写っている一流建築家たちのバレエ写真が笑いを誘う。(参照
 ちなみにこの本で描かれているのは、マンハッタニズムのモデルとしてのNY、フィクションとしてのモデルのNYであり、現実に存在するニューヨークとは少し違う。
 1920年代にフェリスが描いたゾーニング法(都市計画を規制する条例)に基づくデッサンはあいまいさを含む夢のようでありながら、現実となるべき未来を描いたフェリスのデザイン画の解釈とか、読んでいて非常にわくわくする。
 さすがにNYには行けないので、Google Earthを見ながら摩天楼に思いを馳せると楽しい。
「我はビジネスなり。
 我は利益にして損失なり。
 我は実用なる地獄に堕ちたる美なり。」
* 2008/06/24(火) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
カリガリ博士
カリガリ博士

 ドイツ表現主義の頂点といわれている映画。1920年制作。何回か名前を聞いたことがあり、気になっていたので見てみた。youtubeで見れます。
http://jp.youtube.com/watch?v=V2wmu5M5ePI
著作権が切れているパブリックドメインなので、違法じゃないです。訳はないですが、無声映画で簡単な英語の台詞字幕が入るだけなので、大きな問題はないかと。難しい単語はsomnabulist=夢遊病者くらい。ちなみに、この作品は字幕も表現の一部なので、そのあたりも楽しめます。
 ちなみにドイツ表現主義とは、印象主義との対立で、感情や主観が現実の表現にまで影響している芸術作品のこと。
 あらすじ。フランシスが隣に座る男に、彼自身が体験した奇妙な出来事を語る。山あいの村にサーカスがやってきた。そのなかでカリガリ博士の見世物は、夢遊病者の男に予言をさせることだ。友人のアランが男に自分の寿命を尋ねる。すると、それは明日の夜明けだといわれる・。
 一応ホラー映画となっているけれど、スプラッタな表現やおどろおどろしい場面はなく、そういったのが苦手な人でも何の問題もなく見られると思います。
 演出が独特で面白い。絞りを多用した画面切り替え。奇妙に伸びた椅子、歪んだ家、不気味なメイク。ラスト近辺で出てくる明るい音楽と、暗い主旋律のアンサンブルによる狂ったハーモニー。
 話の筋は簡単に予想できるけれど、妙に不安感をあおる演出たちが視線をひきつける。特に後半15分くらいは、シーンの重ね方や音楽の使い方といい、とてもミステリアスで、衝撃の結末とともに非常にうまくできていると思う。古色蒼然とした味わいともに楽しめる古典映画でした。

 以下、ネタバレ
* 2008/06/21(土) # [ 映画感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
八月の砲声(上)
八月の砲声(上)
バーバラ・W・タックマン ちくま学芸文庫

 ピュリッツァー賞受賞作ということで。第一次世界大戦を、日記や手記など一次資料によって丹念に再現し、その発生と推移を克明につづるノンフィクション。
 1914年6月、サライェヴォにて一発の銃声が響く。ベル・エポックの名残、すすむグローバリゼーション、血縁関係で結ばれた各国王族。だれもが地域の小競り合いで終わると思っていた。が、ドイツ参謀が用意していたシュリーフェンプランが自動的に発動。これにより、中立国であるベルギーは領土を侵害され、同時にフランスとロシアの大国が戦争に巻き込まれる。そして、ヨーロッパ情勢と無関係ではいられないイギリスも巻き込まれ、やがて戦争は泥沼へとはまり込んでいく。上巻はベルギー首都ブリュッセル陥落まで。
危機発生時の意思決定が以下に難しい、なんてことを考えつつ、みんながわらわらしている状況が、不謹慎だけれどおかしい。想像による心情描写などはなく、淡々と事実や態度を語っていく中で、各個人の性格が透けて見えてくる。同時に、各国情勢の違いが彼らを縛り、誰もがなんだかよくわからないうちに、未曾有の大戦へと突入していくのである。事件の渦中にいる中ですべてを見渡すのは不可能なんだけれど。
 ドイツがベルギーを舐め切っているところに、毅然とノーをつきつけるベルギー国王アルベールが非常に格好良い。行くも地獄、行かぬも地獄という状況の中で、国民を鼓舞中立国の矜持を保って国民を鼓舞して厳しい決断を下すのがいかに大変なことかは、この本で描かれている各国首脳の苦悩を見ればよくわかる。大国に翻弄される小国は大変だなあと思う。
 というか、チャーチルすごすぎ。
* 2008/06/19(木) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
さくらんぼの性は
さくらんぼの性は
ジャネット・ウィンターソン 白水社

 時間と場所、恋と性、心と体を自由に巡る物語。
 あらすじ?17世紀のロンドン。オレンジを一度に12個もほおばれるほど大女が子供を拾う。彼女は子供をジョーダンと名づけ、息子として育てる。ピューリタン革命が吹き荒れる中、ジョーダンは幻の女フォーチュナータを捜しに海に乗り出す。一方19世紀、ジョーダンは海軍に入隊する。そして、環境問題に身を呈する女性科学者に出会うが。
 あんまりあらすじを書いても意味がない話ではある。この物語で、「時」は過去から未来へと一方向に流れるのではなく、過去は未来からの想像の産物であり、また未来は過去の書物に描かれている。ジョーダンと彼の母親、そして17世紀と19世紀のエピソードは遠くから干渉しあいながら、万華鏡のように視線を乱反射して輝く。そして幻の女であるフォーチュナータ、すなわち未来との邂逅のためにジョーダンは無限の海へと乗り出していく。
 異性愛・同性愛(男女とも)・獣姦・屍姦・殺人や猟奇描写とまあ、エログロに何でもありだけれど、どこかロマンティックで寓話的な文章が夢のようで楽しい。男と女、心と体といった二項対立は消え去り、さまざまな組み合わせの中でどこまでも自由に楽しく作者は筆を滑らせていく。
 面白かった登場人物は、ピューリタンで共和派のスクロッグズとファイアブレイス。健全すぎるゆえの不健全。面白かったエピソードは12人の踊る女王たちの結婚の顛末。「女」の夫と結婚して楽しく暮らしていたところに訪れた悲劇とか、ラプンツェルの恋人として通っていたところに現れる王子様とか、みんなねじれてしまった結末が楽しい。
 ところで「10・1/2の世界史」を読んでいるときにも思ったのだけれど、作品の途中でいきなり説明書き的文章が差し挟まれるのは、イギリス小説の特徴なんだろうか。

今回の引用。何となく気に入った部分から。
この時空のどこかに別の世界が存在しているのかどうか、わたしにはわからない。あるいはこの世界だけが唯一の世界で、後は全部たくましすぎる想像力の産物なのかもしれない。どっちだってかまわない。わたしたちは、どちらの可能性も大事にとっておくべきなのだ。なぜなら、その二つは同じコインの裏表のように思えるから。
いろんな可能性がありうるって楽しいと思います。
* 2008/06/16(月) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
戦闘妖精・雪風
戦闘妖精・雪風<改>
神林長秀 ハヤカワ文庫

ざっと読んだだけの軽い感想
 ずっと読もうと思っていて忘れていた異種間コミュニケーションものSF。異星人とのコンタクトも含めつつ、人間と機械の対比を描く。もちろん、自分の読みは深井少尉と戦闘機「雪風」メインで。
 結論から言えば、非常に自分の好みに近いもので良かった。原型至上主義の異種恋好きにはたまらないものがある。特に、戦闘機である「雪風」があくまで機械としての合理性に徹底して、なんというか同情の余地がないところが。
 特殊部隊として味方を撃つことさえ厭わないように訓練された飛行兵の深井少尉は、愛機雪風以外のほとんど全てを心から切り捨てている。基本的には雪風>それ以外。
 一方JAMという異星人を倒すことを至上命令として与えられた戦闘機の雪風は、パイロットである深井少尉とともに任務を遂行していく。そして重ねられるバージョンアップによって、ついに彼女は人間を必要としないようになるが。
 戦闘機の擬人化はないけれど、どうしても深井少尉は雪風に人格を与えて考えてしまい、まるで「彼女」が恋人でもあるかのように、雪風に裏切られた様に感じたり嫉妬してみたりするのは、彼が人間であるがゆえ。一方で、確かに雪風はパートナーともいえる彼の信頼に応えるだけの働きをしているのだけれど、それはあくまで雪風が機械であるがゆえ。安易な擬人化や都合の良いセンチメンタルを廃したところで、認識枠組みや在り方そのものが違う存在を、「人間」が「機械」に感情を持つということはどういうことなのかを描いている。
 最後に深井少尉が雪風に裏切られたと感じる結末まで含めて、とても面白かったと思う。最後の任務達成率100%というのが、戦闘機である雪風の全てであり、それ以上でも以下でもないところがいいなあ。でもどこかで、何かしらあるといいなと思っているのは、やっぱり自分でも甘いと思う。形からはいる愛があってもいいじゃない。
 続編の「グッドラック」は、もう少しそのあたりが甘いらしいけど、どうなんだろう?
* 2008/06/11(水) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
国際紛争
国際紛争 理論と歴史
ジョセフ・S・ナイ 有斐閣

 国際関係論の基本書。挫折回数2回。でも、とてもよい本だと思う。丁寧で緻密な考察、かつわかりやすい文章によって、ど素人でも理解できる入門書。国際関係を見るに当たって、基本的考え方・枠組みの説明から始まり、それを適用してペロポネソス戦争から第1次・第2次世界大戦、さらに冷戦や中東戦争までの解説、そして9・11テロと未来への展望まで含めて、幅広く説明してくれる。
 主権国家の安全保障や国益を中心としてみるリアリズム、人権や国際協調を重視するリベラリズム、文化的・社会的変遷を強調するコンストラクティヴィズム。これらの視点一方だけでは、多様な側面が存在する国際関係を理解しようとすることは困難である。真のリベラリストであるには、リアリストたれというところ。
 第2次世界大戦は、第1次大戦の教訓が生かされなかったから起こったのではなく、むしろ第1次大戦の戦後処理の失敗と、そのあまりにも多大な損失から生まれた教訓による宥和政策が逆効果になって、引き起こされてしまった面が強い。そこに、ヒットラーという強い個性が介在することで、より悲惨なものになってしまったというか。
 歴史的大事件は、必然だったのではなく社会・経済的要因、国家的思惑、個人的要因などが絡み合った上で、選択肢が徐々に狭まって不可避に限りなく近くなってしまうんだなあと思った。歴史は最悪の経路をたどっているように見えることもあるけれど、キューバ危機のように悲劇を避けられることもあるし。
 一面的・短絡的・感情的説明はわかりやすいけれど、それでは扇動者や偏向情報の思うが侭だし、事態に対して有効な判断や教訓を得るための妨げになる。というわけで、ニュースをもう少しまじめに、広い視点で考えるにはよい本だと思いました。
* 2008/06/05(木) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
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