÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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伝奇集
伝奇集
ホルヘ・ルイス・ボルヘス 岩波文庫

 短編集である「八岐の園」と「工匠集」を合わせたもので、ボルヘスの代表作。というか、どうしてボルヘスさんはこんなにもすばらしく読書のセンスが良いのだろう。そしてそれを端正で洗練された小説に変える手際の良さ。
 何となく小難しくて哲学的なことが書いてあるのだろうと、食わず嫌いだったのだが、短編なので読みやすいし、その上非常に面白い。全部で19編収められているが、ほとんどはずれが無く、面白いエッセンスが凝縮されてそれぞれの短編になっている。有名なバベルの図書館も出てくるし、とにかくボルヘスさんが本を読むことが好きなんだなあということが分かる一冊。読書家を自認するなら読むべし。

 以下、特に面白かった作品の覚え書き
『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』
存在しないウクバールに関する架空の本とその内容を巡る話。この話意外にも、この短編集には架空の本とその批評に関する話が多い。抽象的な話なので、感想は書きづらいのだけれど、まさに読書ってこういうことだと感じる話。過去を複製し、影響しあいながら変えていくフレニールや、期待によって出現したりするウルとかは一度現物を見てみたい。存在しないからこそ良いのだけれど。
『『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール』
なぜジョイスの「ユリシーズ」が面白いのかという解説。
『バビロニアのくじ』
まがい物の神様の話。公平を求めて自由を放棄した私たちの運命は、全ては意図的な偶然であり、そしてくじの講社の姿はもう見えない。
『バベルの図書館』
面白いのだが、感想は書きにくい。本の世界と世界の本。
『裏切り者と英雄のテーマ』
ロマンチックで素敵な処刑の行い方。
『死とコンパス』
ミステリ風。この手の過剰な意味づけネタだとやっぱり「薔薇の名前」を思い出す。あれだけやっといてそのオチか!と笑った気が。そういえば、薔薇の名前に出てくる迷宮図書館の館長の名前もホルヘなんだが、やっぱりボルヘスさんからとっているのだろうか。
『隠れた奇跡』
ドイツ軍に処刑される寸前のヤロミール・フラディークに起こった奇跡。不条理劇に近い(未完の?)作中劇「仇敵たち」も見てみたい。
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* 2007/07/27(金) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
枯木灘
枯木灘
中上健二 小学館文庫

 日本文学を思い立って読んでみるシリーズの第3弾。何だか疲れてきたので、これにて打ち止め。
 あらすじ。「岬」の主人公竹原秋幸は26歳となり、土方の現場監督として働いている。噂としてあること無いことをしゃべる竹原家のユキや妾腹の徹、養子としてなじもうとする洋一や、16歳で子供を産む美恵の娘の美智子など、さらに親族を加えて流れていく重苦しい日常。そして夏祭りの日にあの男と出会った秋幸は、腹違いの弟秀雄を殺してしまう。
 「岬」は短編だったが今回は長編なので、登場人物やそれにまつわるエピソード、そして土地の歴史的な重みもどんと増え、さらにおなかいっぱいな作り。複雑な秋幸を単純に受け止め続ける大地。虚偽の歴史の始まりとして男性器を象るような浜村孫一の像。例のごとく文学的な象徴を上手く取り入れながら、主人公の父親浜村龍造を基点とする複雑に絡み合った家族関係と周縁の土地紀州を描いていく。秋幸や自殺した兄郁男と種違いの姉の美恵、腹違いの妹さと子にからむ『きょうだい心中』の唄や、洋一や徹に重なる親子の屈託、誰かが死んでいく一方で生まれてくる子供、そして何より秋幸へと流れ継がれていく男の血。それまでメインの視点だった秋幸から、徹へと視点が移り、秋幸の実像が曖昧になっていく中での白痴の少女とのラストシーンが何とも言えず恐ろしい。
 ほとんど直接的な描写はないけれど、悪評や様々な噂を吸い込み、秋幸の心の中で大きな位置を占めることで、誇大化していく龍造の圧倒的存在感が印象的だった。
 全体として、面白くて上手くできているのは分かるが、やはり読んでいて非常に疲れました。
 私が読んだのは小学館文庫版なので、柄谷行人の解説が付いていて『中上の作品はフォークナーとの類似性がある』と書いてあるのだが、わたしはフォークナーを読んでいないのでよく分からないが、この複雑で幾度も繰り返し続けるような家族関係に何となくマルケスの「百年の孤独」を思い出した。
* 2007/07/13(金) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
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