÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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人獣怪婚
人獣怪婚
七北数人(編集) ちくま文庫

 ちくま文庫のアンソロジー「猟奇文学館」の第2弾目。他のラインナップが「監禁淫楽」と「人肉嗜食」ということからも分かるように、エログロ短編集。現代小説で異類婚姻譚物はなかなか見つけにくいので、けっこう貴重。有名どころだと澁澤龍彦や、皆川博子、阿刀田高・中勘助(『銀の匙』の人)といったちょっと古めの作家や、よく知らない怪奇小説家による12編が収められている。
 一口に異類婚姻譚といっても幅は広く、それこそ獣姦そのままといったものから異種間コミュニケーションをテーマとした物、形式も民話調のものからショートショートまで多彩に楽しめる。幻想的な話もいくつか。が、いまいち好みに合うものが少なかった。エロティシズムを基調としたものではなく、コミュニケーションを基調としたものが読みたかったからかもしれない。ただでさえ探しにくいジャンルなのに、ストライクゾーンが狭くて困る。やっぱりSFかファンタジーに向かうべきか?
 以下、気の向いた話の寸評(括弧内は相手の動物)
 阿刀田高『透明魚』(魚)
すぐオチの見えるショートショートはいただけません。
 眉村卓『わがパキーネ』(異星人)
この本の中では珍しく異星人の女性が相手。醜い異星人と身勝手な地球人の恋愛はいかにして実るのか。
 宇野晃一朗『心中狸』(狸)
田舎のじいさんが語る滑稽な狸の恋愛譚。失笑を誘うようで哀れな最後が良い。とりあえず、狸が恋情を抱いた姫君の尻の描写が圧巻。
 勝目梓『青い鳥のエレジー』(インコ)
前半の主人公の青年と青いインコとのエロチックかつ脱力気味の友情で終わっていればもう少し面白かったかも。後半は、女性の悲劇によって妙に説明くさくなってしまったような気がする。説明が付きすぎると、異類婚(?)の面白さである「何だかよく分からない」という部分が無くなってしまうと思う。
 皆川博子『獣舎のスキャット』(豚)
このアンソロジーの中では一番力強さが感じられた作品。近親相姦をベースとして、姉の弟への偏執的で鬱屈した愛情に重なるように、盗聴や謀略といった演出によって緊張感が高まっていく。そして唐突な全く容赦のないラストが衝撃的。この話が面白かったのは、おそらく「獣姦」というツールが一番上手く、かつ効果的に使われているからだろう。

 異類婚姻譚つながりでは、和洋の民話を比較することによって、自然と人間の関係を探る「昔話のコスモロジー」(講談社現代新書 世界各国の異類婚姻譚を系統立てて紹介してくれる)とかSF風味な漫画短編集「千の王国百の城」(清川なつの 人と人間並みの知能を持ったゴリラの話)がおすすめ。
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* 2007/06/29(金) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
三四郎
三四郎
夏目漱石 岩波文庫

 思い立って読んでみた日本文学第二弾。割合素直な小説なので、感想も短め。
 あらすじ。主人公三四郎は、大学入学のために九州から上京する。大学の先輩や同級生、高等学校の先生など、都会である東京で様々な人物や出来事に出会い、三四郎は戸惑いながらも成長していく。そして現代的美人である美禰子に心惹かれるようになるが。
 田舎の純朴である若者が、都会に出て視野を広くし、自分の立身について考えるようになるという教養小説的テーマと、真意の読めない美女美禰子との恋愛、という二つの軸を中心に小説は進んでいく。『吾輩~』や『坊っちゃん』と比べると堅くなってきて、『それから』『門』につながるような後期漱石風になっていくが、会話文や口だけは達者な与次郎あたりに前期漱石の面影が残っている。
 冒頭に汽車で出会った行きずりの女から、部屋を同じくしながら何もしなかったことに対して「貴方は余つ程度胸がない方ですね」と言われるシーンがあるのだが、三四郎の田舎っぽいところと野暮であることを象徴するこの描写は楽しい。
 どことなく「寒月」に似ているような気がする野々村や、その可愛らしい妹であるよし子や、同級生の与次郎など東京で色々な人物と出会うのだが、その中でも広田先生が一番印象深い。結婚もせず、世間から離れて、時にお節介な教え子に手を焼かされつつも、恬淡と生活している様は、主人公の目指すどの世界とも関わらないが、それでも三四郎に大きな影響を与えている。最後の憲法発布の際に出会った女の子と母親のエピソードは反則に近い。
* 2007/06/24(日) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0

中上健二 文春文庫

 日本文学を読まなければと思い立って、読んでみた。翻訳物と違って、やっぱり日本語は母語だという感じがした。全体的に、湿った臭いのする短編集。
 収録作品は、『黄金比の朝』『火宅』『浄徳寺ツアー』『岬』の四編。どの作品も独立しているが、主人公の家族構成など背景は似ている。正直なところ、最初の三編は読んでいて全然合わず、途中であきらめようかと思ったが、『岬』はとても良かった。前の三編は、『岬』を読むための準備運動なのだと思えば良いと思った。
 短編は、それぞれ父親が違う兄弟たちや、父親を突き放した主人公など背景は類似しているが、細かなところを少しずつずらしながら、何度もなぞるように家族を描いていく。特に『岬』はそれぞれの家族が自分たちの家系を眺める歪んだ視点が、父親に対する憎悪と執着を滲ませる主人公の視点から浮かび上がってくる。主人公らの住む町にそびえる「岬」が、それらを包括するように象徴していて、いかにも『文学』という印象。
 とりあえず、濃厚な雰囲気の家族描写におなかいっぱい。
 今回は、主人公が異母妹と交わるラストシーンから。これだけ読むとよく分からないが、全編通してから読むと、何やら意味深い。
おまえの兄だ、あの男、今はじめて言うあの父親の、俺たちはまぎれもない子供だ。性器が心臓ならば一番よかった、いや、彼は、胸をかき裂き、五体をかけめぐるあの男の血を、目を閉じ、身をゆすり声をあげる妹に、見せてやりたいと思った。今日から、おれの体は獣のにおいがする。(中略)いま、あの男の血があふれる、と彼は思った。
* 2007/06/23(土) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
モードの迷宮
モードの迷宮
鷲田清一 ちくま文庫

 合わないヒールに足を歪めている女性、毎年夏の前にダイエットを思い立ち挫折している全ての女性は一度読むと、心が軽くなるかも知れない本。纏足・コルセット・ネクタイ・ベルト、昔から私たちの体は服を纏うのではなく、服によって形作られているのだ。
 内容は、ファッションそれぞれの流行の流れを追うものではなく、服飾という『モード』が人間に対していかなる役割を果たしてきたかを説明している。チラリズムって素っ裸よりエロい、ということを学術的に説明してくれたり、普段何気なく着ている衣服を新しい観点で見直してみる視点は面白く、そんなに長くないこともあって一気に読めた。ただ、後半は同じ主題の繰り返しで、読んでいて少し退屈。
 隠すことでより注目を引き寄せる衣服。人体という『自然』を統制するための衣服。『私』という空虚を包み込んで形作る衣服。作為によって変化する客体を、さらに捕らえるために『モード』は常に変わり続けることを余儀なくされる。二つの極の間で揺れ動きながら、変化するというその運動自体が『モード』である。
 著者が哲学専攻の大学教授と言うこともあって、メルロ=ポンティとかロラン・バルトとか名前は聞いたことはあるけれど、なかなか読む機会のない思想家の著作が多く引用されていて、それだけでも読んでいて興味深い。バシュラールの「夢見る権利」などは題名からして気になる。
 贅沢を言えば、男性のファッションや日本の服装について、もう少し言及があると、さらに良かったと思う。同じ筆者による同テーマの本がいくつか出ているみたいなので、その辺りで補足されているのだろうか。あと、本書の中で使用される重要な概念である『私』が、非常に西洋的に捉えられているのも気になった。
 最後に、モードに付与された意味を転倒させ、日常から離れた場で、その落差に快楽を見いだすSMは、非常に洗練された『遊び』なのだと思いました。隠すべき場所を露わにし、徹底的に拘束することで解放し、身体にまで浸透した文化コードを解体することで得られる快楽。確かに「この雌豚!」とか言う代わりに「この雌キリン!」と言っても、笑いにしかならないしなあ。
* 2007/06/04(月) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
バカカイ
バカカイ
ヴィトルド・ゴンブローヴィチ 河出書房新社

 第2次大戦前に活躍したポーランド作家の短編集。翻訳されたのは最近なので、読みやすい文体。古臭い感じはせず、奇妙に歪んだ味わいが魅力。『バカカイ』とは日本語で聞くと変だが、どこかの通りの名前らしい。この翻訳以前では『ばかあかい』となっていて、反共産主義っぽくこれまた変な感じだ。ポーランドだし。
 以下、面白かった作品の感想。オチにも言及しているので、これから読む予定の方はご注意を。

『クライコフスキ弁護士の舞踏手』
短編集の中では、一番飛ばしている感じがして好きかも知れない。ストーカー主人公の一人称によるその行動の軌跡。主人公の唐突さと偏執的な行動に笑いが漏れる。ストーカー相手の浮気相手(予定)への手紙とか。全編を通して登場人物は何かおかしいのだけれど、本人はまともなつもりでそれを自覚していないのが一番笑える。
『計画犯罪』
予審判事が事務手続きで訪れた家では、その前日に家長が死んでいた。何やら怪しげ見える家族の態度と、全くおかしな所のない死体。事件があると確信した予審判事は、調査を開始するが…。
オチは読めるけれど、そこまでの書き込みが執拗で読ませる。この話の中で何が一番おかしいのかというと、主人公の性格だというのがまた。
『帆船バンベリ号上の出来事』
その前に収められている『冒険』の方が、より洗練されている気がするけれど、個人的にはこっちの方が好き。最後の一文を書くためだけに、書かれたと言っても良い。主人公は、急ぐあまり予定とは違う船に乗ってしまう。帆船の上での退屈した日々の中で、綱の丸飲みなど少しずつ起こる奇妙な出来事。厳格さを保とうとする船長達と不穏な船員。遅々として進まない船。最後に一頭航海士と踊り出す船長が最高。
『裏口階段で』 蓼食う虫も好きずき。
『大宴会』 平凡な王様が結婚式披露宴の場で超・国王となって超・疾走!
* 2007/06/02(土) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
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