÷0  ジャンル雑多な読書感想文
2007.02 « .1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31» 2007.04
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
* --/--/--(--) # [ スポンサー広告 ]
宇宙創世記ロボットの旅
宇宙創世記ロボットの旅
スタニスワフ・レム ハヤカワ文庫

 レムのユーモアSF短編連作。堅苦しい感じの「ソラリス」とは違って気楽に読めるけれど、やっぱりレムだなあという感じのSF。『宙道師』や詩人『白楽電』など無理矢理感も漂う翻訳者の言葉のセンスがすごい。
 あらすじ。『無窮全能資格』を持った宙道師トルルとクラパウチュスは、宇宙の様々な国に出かけ、助言と優れた技術を授けるロボット。そんな二人は、戦争好きの君主が治める国に出かけたり、恋に迷った王子に助言したり、たまには家で詩作ロボットを作ってみたり、面白可笑しく旅を繰り広げるのだが。
 まじめに宇宙論や文学論を語ってしまうレムもいいけれど、その知識を生かして面白いSFを書いてしまうレムもよかった。他の作品にも通じるけれど、確率やサイバネティクスによる宇宙のとらえ方の発想がとても素敵。解説によると、現代社会に対する風刺も含んでいると言うことだけれど、そういうことはよくわからずとも、好奇心旺盛な二人のロボットと奇妙な星を巡る旅は愉快。昔の翻訳らしさとポーランド語圏のせいなのか、過剰な漢字とよくわからないカタカナから成る固有名詞が、また不思議な印象を醸し出している。

以下、面白かった章の感想
『竜の存在確率論』
 楽しい確率論の話。絶対に存在しない竜には、ゼロ型・虚数型・マイナス型と分類されるといった独自の竜学が述べられる。確率増幅器を使って存在しない竜の潜在的出現確率を高めたり、不可能出現密度が高まることで蝶がモールス信号を送り出したり。理論上0.6匹の竜が得られるといったような、数学理論がそのまま竜の存在論になる世界が面白すぎる。虚竜2匹でマイナス竜1匹になるんだろうか。
『盗賊「馬面氏」の高望み』
 情報を何よりも愛する盗賊に、トルルとクラパウチュスが素敵なプレゼントをあげる話。原子の衝突の莫大な組み合わせを情報としてとらえ、その中から真実であるものだけを取り出す「二流悪魔」が、馬面氏に全く恩恵をもたらさないのがよい。情報とは真実であるだけでは、実にしょうもない。
『トルルの完全犯罪』
 トルルは追放された独裁的な君主「放逐王」のために、プログラミングして知的生命体そっくりに反応するサイバネティクスがすんでいる小さな箱入りの王国を作ってあげた。そのことをクラパウチュスに怒られたトルルがもう一度「放逐王」に会いに行くと、という話。このサイバネティクスのとらえ方は、今となっては結構ベタな気もするけれど、その精密なプログラミングの書き方が面白い。極微族の住む星の衛星として、最後に月となって回っている王様のシュールさが幕引きの情景として心に残った。
スポンサーサイト
* 2007/03/28(水) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
10・1/2章で書かれた世界の歴史
10・1/2章で書かれた世界の歴史
ジュリアン・バーンズ 白水社

 歴史をいかに語るか、どう伝えるか、そもそも歴史とは何なのか、ということをテーマにし短編集。もう少し、いわゆる世界史について扱っている小説かと思っていたので、自分の期待していたものとは微妙に違っていたけれど、結構面白かった。(特に前半部分)技巧的で、ペダンチックで、ユーモアあふれる小説はどうやら好みらしい。
 それぞれの短編は独立しているが、共通のモチーフが用いられることによって、読んでいるうちに少しずつ話がつながってくる。強者によって語られる歴史を嘲笑うかのように存在するキクイムシ、太古の昔からまさに現在まで選別される『清潔な者と不潔な者』、そしてノアの方舟。
 小説というアプローチだからできるフィクションとしての「歴史」の楽しみ方。この作者は巧いなあ。

以下、面白かった章の適当な感想
「密航者」
ノアの方舟に潜り込んだ、とある生物の話。神話的にではなく、そこから省かれた者からの視点で語られる皮肉なノアの方舟の物語。全てはここから始まった。
「宗教裁判」
時は中世。司教の座る椅子を腐らせた咎で、キクイムシは教会から破門の危機に!凄腕法学者がキクイムシの弁護に挑む!という話。口頭弁論などの裁判形式に則った形で書かれた小説。個人的には、一番面白かったかもしれない。内容は馬鹿馬鹿しいことこの上ないのに、主張は訴訟法の構造に忠実で、正しくて大まじめだからこそ可笑しい。というか、中世の時代には本当に動物を相手にした裁判があったらしい。全部人間の独り相撲なのが哀しい。
「難破」
一つの壮絶な遭難事故が、絵画として描かれるまでを、詳細な資料によって追う話。事実としての出来事が、加工されて「歴史」となっていく過程が楽しく読める。

 キリスト教的歴史観がいまいちぴんとこないので、ノアの方舟の話にどうしてそんなに噛みつくのだろうと言う気がしないでもない。でも、聖書原理主義者(という言い方でよいのか?)は、ほんとうに洪水があって、生物たちが方舟で絶滅を免れたと信じていて、大まじめに方舟の大きさについて議論していると聞いたこともあるし、西欧で歴史を扱うにはこれくらい過激に行かなくてはいけないのかもしれない。断章で、いきなり愛について語られたときはびっくりした。
* 2007/03/15(木) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
ハツカネズミと人間
ハツカネズミと人間
ジョン・スタインベック 新潮文庫

 ノーベル文学賞受賞者による150ページ弱の短編小説。シンプルにして明確。
 あらすじ。アメリカにて。小柄で目端の利く性格のジョージは、幼い頃からの知り合いである頭の弱めな大男レニーと組んで、渡りの労働者をしている。悪意はないが思慮もないレニーのせいで、仕事はいつも長くは続かず、二人はほとんど文無し状態。だが、二人には『土地と小さな家を持って、そこでウサギを飼って暮らす』という夢があった。そんな二人は今度こそお金を貯めるために、農場で働き始めるのだが。
 凸凹コンビの書き方がうまい。冒頭の、二人の間で半ば儀式化されているような夢の話のあたりは、双方が相手にとって必要な存在であることを印象づける。さらに、戯曲風の限定された情景描写が、描かれない内心を引き立てている。エピソードの絡め方もよく、無駄のない構成で最後まで読ませる。出てくる登場人物全員が、必要十分に役割を果たしている印象を受けた。(決してそれ以上でないところが、この小説が無駄のない理由なのかもしれない)
 衰え行く老人、被差別者である黒人、危険な女。皆が自分だけの力ではどうすることもできない閉塞感と無力感をかかえている。『夢』を共有することで訪れた和解の兆しは厳然と存在する現実の前に費え、だれもが力無く退場していく。
 関係ないけれど、レニーは肉体労働以外は何をやらせてもだめだけれど、ジョージの扱いだけは上手いと思った。全部わかっているみたいであるし。

 ところで、解説や紹介でよく書いてある「温かいヒューマニズム」とはいったい何なのだろう?

(以下ネタばれ 未読の方はご注意を)
* 2007/03/05(月) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。