÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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グランド・ミステリー
グランド・ミステリー
奥泉光 集英社文庫

 夏休みなので、太平洋戦争物を。(追記:夏休みに書いた)といっても、重苦しく戦争の苦難や非人道性を語るものではなく、背景の一つとして使われているだけですが。戦記だったり、ミステリーだったり、ピカレスクだったり、思想小説だったり、(ネタバレ)だったり、色んな要素が組み合わさっているので、感想書くのも結構大変。
 あらすじ。潜水艦の先任将校である片瀬は、真珠湾戦で決死の作戦である特殊潜行艇の乗組員の遺書が消えたことに疑問を抱く。また、一流パイロットである彼の友人榊原が、空母に戻った直後に飛行機上で謎の服毒死を遂げる。美貌の未亡人志津子の依頼を受け、片瀬は榊原の不審な死の真相を調べ始める。そして、「国際問題研究所」と言う怪しげな機関が浮かび上がってくるが。
 空母や潜水艦が重要な役回りとして出てくるので、海軍好きの人には堪らないのかも知れない。映画にもなった特攻潜水艦「回天」の存在は、これで初めて知りました。ですが、兵器に全然興味なくても、ふつうに読めます。
 戦争の緊張感漂う真珠湾と、未だ戦火の臭いしないインテリたちが住まう東京。全く異なる二つの場面を、潜水艦乗りであり、一人の妹の兄である主人公片瀬が繋ぎ、殺人事件の謎が桜の幻影と重なったときに、天才の狂気が引き寄せる新たなる展開とは。ということで、大風呂敷を広げるに広げた展開だけれど、その緻密な構成と、謎を引っ張る展開で、最後までだれずに読める。ミステリーとしても、戦争物としても、(ネタバレ)としても、かなりの質だと思うので、読んで損はないと思う。そういえば、今回はちゃんと謎が解けていてびっくりした。今のところ、この人のミステリーで最後までに謎が解いてもらえるのは、これと「モーダルな事象」だけなのでは。
 今回は、キリスト教信者の本多弁護士の演説から一番印象に残った台詞を。
隣人とは、私と同じ者、等しい者の謂ではない。私とは別の者、等しくない者、根元的に対立をはらんだ者であり、であるが故に、この世界を豊かで光輝ある世界に変えうる存在なのです。どうか、みなさん!理性と知恵を働かせてください。この狂気じみた時代にあって、自棄になって、自分を捨て去り、狂気に自ら進んで没入したりしないで下さい。毒をくらわば皿までなどと考えないで下さい。毒は食べても、皿を食べなければ命が助かることだってあるのです。


適当な人物紹介
片瀬稔 主人公で潜水艦勤務の将校。真面目でむっつりさん。
片瀬範子 主人公の妹。頭も良くさっぱりした性格だが、若干ブラコン気味。
彦坂淳一郎 シークレットブーツとカツラ疑惑のある、謎の商社社長
木谷紘平 片瀬の部下の将校。特技は猥談
顔振清吉 海軍の整備兵曹長で、榊原を尊敬していた。帽子の振りすぎで肩こりを起こすお茶目さん
梶木平太郎 元海軍兵(下っ端)アウトローで目端が利く
友部拓郎 範子の義兄。奥泉作品にお馴染みの、口は無駄によく回るが、根性がからきし無いタイプ。楽しい
他、個性的な面々がいろいろ

以下ネタバレ

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* 2007/02/14(水) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
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