÷0  ジャンル雑多な読書感想文
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2006年の読書総括
今年読んだ約80冊の中から適当に寸評

○今年の一冊
失われた時を求めて」&「ユリシーズ
20世紀の文学の始まりにして完成と、終焉にして到達点。
一冊じゃないですが、セットで。
お世辞にも読みやすいとは言えないし、よく分からないけれど長いので、他人に勧められるかというと勧めにくいのだが、読めばかなりの達成感と自己満足が得られる。
「失われた時を求めて9」の眠っているアルベルチーヌを眺めるシーンと、「ユリシーズⅡ」の遊び心は必読。



○今年のおすすめ
エロ事師たち」 野坂昭如
AV制作など戦後勃興期の風俗産業に関わるスブやんを筆頭としたエロ事師たちの話。
とにかく読みやすくて面白い。
下品きわまりないはずなのに、随所にちりばめられたアイロニーから漂う哀愁がまた心地よい。
まるで一回の性行のごとく、焦らし寄り道しながら、燃え尽きるまで、うさんくさい語りに乗せて、駆けて駆けて駆け抜けてしまえ。



○今年の登場人物
ニカルノ神父
百年の孤独」(ガルシア・マルケス)より
神の存在を証明するために、溶かしチョコレートを飲んで浮遊する。しかも12センチ。
とても説得的。
しかも作者のミスによって、頭を銃でぶち割られても、次のページではぴんぴんとしている。
意味が分からない。
これほど不条理で魅力的な神父を今のところ、他に知らない。



○今年の一言
「それで地球はどうなったんだ?」
「ああ、破壊されたよ」
「破壊」アーサーは抑揚のない声で言った。
「ああ、蒸発して消えちまったよ」
「あのさ」アーサーは言った。「ちょっとショックなんだけど」
銀河ヒッチハイク・ガイド」(ダグラス・アダムス)より
ある日我が家の敷地がバイパス建設予定地だったことに抗議して泥に寝転がって抗議していたアーサーが、いきなり宇宙船に乗せられ、銀河バイパス建設のために地球を破壊されたのを知ったときの一言。
まことにその通りがゆえに馬鹿馬鹿しいユーモアっていうのが、結構好みだったらしい。
この作品や「猫のゆりかご」みたいな、呆気ない滅亡ものSFは他にもあるんだろうか。



○今年のノンフィクション
ガリレオの指」 ピーター・アトキンス
「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド)と迷ったが、カバーしている範囲の広さと応用が利きそうなことからこっちに。
良質の科学解説本。
丁寧で正確な解説、わかりやすい比喩、にやりとさせられるユーモアと、解説書が持っているべき要件を3拍子そろえていて、大部だが読みやすい。
これだけ読んでおけば、いっぱしの科学通が気取れるような気がする。



○今年恥ずかしかった本
蛇を殺す夜」 奥泉光
黒光りして性器を模したような不気味な何かが蠢く表紙。
図書館で借りたときに、司書さんが裏返してくれたのに、裏も同様の装飾でどうしようもなかった。
中編2編で内容は(多分)まじめな純文学。
違う表紙で文庫化してくれたら買う。



○今年だまされた本
顔を持つまで」 C・S・ルイス
作者はナルニア国物語で有名な人。
ギリシャ神話のエロスとプシュケを元にして書いた小説。元の神話は読んだことがあったので、異種族感恋愛の話が読みたかったのに、中身は姉の葛藤を軸とした姉妹愛の物語でした。
全然違うものを期待して読んだのも悪かったが、物語の最後になって最初から分かり切っていたことをとくとくと語られても困る。



○今年の挫折本
「ブリキの太鼓」
ギュンター・グラス
そういえば、作者がナチスと関係があったことをカミングアウトしましたね。
で、何やらおもしろそうだったのだけれど、長いのと文庫の文字が小さいのに、一巻の半分あたりで挫折。最後は感動的らしいが、たどり着けるのはいつになるだろう。

○今年の反省
ヴォネガットJr.とか「キャッチ=22」とかイーガンとかSFがわりと豊作だった。
名作(特に海外物)も重点的に読めたし。
全体的にあまりはずれがなく、よかった。
アマゾンのリストマニアは活用すべし。

○来年の抱負
続けて名作をがんばって読む。
社会科学系(特に経済学)あたりも読んでみる。
ジャンルは食わず嫌いしないようにする。
来年も良い本に出会えますように。
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* 2006/12/22(金) # [ 企画 ] トラックバック:0 コメント:0
ヴィルヘルム・マイスターの修業時代
ヴィルヘルム・マイスターの修業時代
ゲーテ 岩波文庫

 文豪ゲーテの偉大なる教養小説。
 あらすじ。幼い頃から演劇に親しんできたヴィルヘルムは、恋人に裏切られたことをきっかけに、演劇の世界へと身を投じる。旅芸人の元から引き取った少女ミニヨンと孤独で謎めいた吟遊詩人と共に、ヴィルヘルムはさまざまな青春の困難に出会い、成長していく。
 一言で言えば、『よい小説』 3巻仕立てで結構長いのだが、すらすらと非常に読みやすい。ユリシーズに疲れた頭には、簡潔で無駄のない文章が身に染み込みます。途中で出てくる謎の登場人物や、小道具の配置が巧く話を引っ張っていて、長くてもだれさせない辺りがさすが文豪。内容も、芸術一辺倒ではなく、若く未熟なヴィルヘルムの成長が軸となっていて、その周りを、演劇を中心に恋や商売や宗教が彩っている。若者が陥りがちな誤りが余すところなく書いてあって、教育効果はかなり高いのでは。
 とりあえず中盤でいきなり挿入される『美しき魂の告白』が圧巻。
 次々とヴィルヘルムに関わっていく登場人物、特に女性陣が、魅力的で多彩。情熱的な恋人マリアーネに、無邪気で妖艶な女優フィリーネ、高貴で優雅な人妻の伯爵夫人に、堅実な女性に、男装の女騎士(アマツォーネ)。一番の肝は、少年のような格好をして、ヴィルヘルムを父のように慕う少女ミニヨン。彼女の悲劇的顛末は本当に気の毒(ヴィルヘルムはもう少し反省すべきだ)。そして全体的になんだかギャルゲー風味。
 難を言えば、馴染んだ登場人物が死んだ時に、淡々と別の話をしてたり、あまつさえ結婚を申し込んだりしている場面がいくつかあって、そんな場合じゃないだろうと思う。当時のドイツでは、そんなものだったのだろうか。
 続編の「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」も読まなければ。

今回は商人のヴェルナーと主人公ヴィルヘルムの会話から
「他人の愚行から利益を引き出すことほど、理にかなったことはまたとないからね」
「人間を愚行から救ってやる満足の方が崇高だと思うがね」
「ぼくに言わせれば、そいつは、まあ、無駄な骨折りだね。たったひとりの人間を利口にし金持ちにするんだ。容易なことじゃあないよ。しかもその場合、たいてい、その費用は誰か他人がはらうことになるんだ」
結局、物語のはじめのこの言葉が一番正しかった気が。
* 2006/12/19(火) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
ユリシーズⅣ
ユリシーズⅣ
ジェイムズ・ジョイス 集英社文庫

 何とか読み終わった最終巻。ついに故郷のイタケまで戻ってきました。全編通して、思った以上に楽しかったので満足。やっぱりスティーブンのところの叙述はよく分からないが。
 あらすじ
『エウマイオス』
喧嘩沙汰になったスティーブンをブルームは酒場まで連れて行き、もリーの写真を見せて妻を紹介する。午前一時。文体は、手垢の付いた言い回しで。
『イタケ』
スティーブンと共に家に帰ってきたブルームは、ココアを飲みながらスティーブンと他愛もない会話をする。二人は庭に出て用を足しながら、彗星を見る。スティーブンが帰った後、ブルーム派もリーの寝ているベッドに横たわり、眠りにつく。午前2時。文体は、質問と回答から成る「教義問答」風に。途中のスティーブンの歌(楽譜付き)が楽しい。ゆーだやじんのーいえだー。
『ペネロペイア』
モリーがベッドの中でいろいろなことを考える。午前二時半。文体はyesとノンストップな思考風。
yes山にさくぼくの花yesと言っておくれとそしてあたしはまず彼をだきしめyesそして彼を引きよせ彼があたしの乳ぶさにすっかりふれることができるように匂やかにyesそして彼の心ぞうはたか鳴っていてそしてyesとあたしは言ったyesいいことよyes。

 知識人であり形而上学的に世界を語るスティーブンと、(エセ?)科学的かつ世俗的なブルーム。若者であるスティーブンは就職先を辞め、塔から出て未知の世界へと旅立ち、一方ブルームは一日の終わりに自分の家に帰還する。けれど、そのブルームの元にいるモリーはブルームにとって慣れ親しみ、かつ未知の存在なのである。モリーとボイランの不義は、アイルランドの英雄パーネルや、アイルランド自身、小説「罪の甘い歓び」そしてペネロペイアに仮託して重層的に語られ、様々な些細なエピソードを取り込みながら、平凡人のありふれた一日は果てしない広がりを持った叙事詩と重なっていく(ように見える)。
 全体的な印象は、自己増殖プログラム付きの壮大な遊具(読者参加型)といった感じ。『オデユッセイア』の枠組みの中で、歌ったり、パロディしたり、謎々や下ネタを交えて、とにかく「小説の」言葉で遊び倒してしまった作品。全編にわたって縦横無尽に配された仕掛けは、分厚い注をしても全て解説されてはいない。そして、文学者たちの解釈は更なる解釈を呼び、わたしたち読者はふくらみ続けるテキストの中でいつまでも遊び続けていられる。漫然と読んでいると、すぐ置いてけぼりを食らって結構きついのだが、こっちもがんばるとその分楽しめたりして、スリリングな読書体験が楽しめる(気がする)
 例えば17章に
 いかなる天上のしるしが両者によって同時に観察されたか?
 天頂の琴座のヴェガから、髪の毛座の星群を超え十二宮のレオの彼方へと天空を横ぎって明らかに高速度で突進してゆく一個の星。
という文章がある。注にはこの獅子座のレオを「レオポルド・ブルーム」の『レオ』と解すると、様々な解釈ができると書いてある。普通なら、抽象的な文学的意味を添えるための言葉のように見えるけれど、素人読者たるわたしから読むと、別に御者座だろうが、乙女座であろうがこの場面の情景は変わらない気もする。(勿論その日の天球の範囲で)けれど、わざわざ『レオ』と書いてあるのは、それが「レオポルド・ブルーム」を連想させるからで、そうすれば読者が勝手に関連づけて考えるからで、それは小説を読むという行為と自然に意味を孕まざるを得ない言葉にとって必然であり、ここにわざわざ『レオ』がでてくるのは、それだけの理由でしかありえない(と思う)。その意味で、この『レオ』はまことに小説的な『レオ』なのだった。
 個人的には遊び心全開の、2巻『セイレン』と『キュクロプス』が楽しかった。『ナウシカア』のシュールな場面も好き。

 この丸谷訳以外に柳瀬訳も読んでみたいし、まだユリシーズでしばらく遊べそうです。
 というわけで、いざ漕ぎ出でむ、豊饒かつ広漠たる言葉の海へ。En-Joyce!
* 2006/12/05(火) # [ 読書感想文 ] トラックバック:0 コメント:0
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